第漆話『魔法世界と一人の侍』
俺は妹(仮)にこの世界に飛ばされた。
何というか、強くなるためって言っても、ここは最悪の世界だよっ‼︎
早く帰りたいよ‼︎
何故かって?
「おらぁ!持ってるもん全部寄越せやっ!」
「いやだぁぁぁぁぁぁ!」
と、まぁ追いかけられてるわけです。
これどうしようもないよね。
ん?……はぁ⁉︎
あのおっさん何使ってるのか知らないけど一瞬で真横にいたよ⁉︎
なにそれ⁉︎チートか⁉︎魔法とかそういう奴なんか⁉︎
「おらおらおらぁ!身包み剥いだるわ!」
「嫌ぁぁぁぁ!」
「ぐおっ⁉︎」
ドサッと後ろから聞こえた。
「……大丈夫か?」
背後から凛とした声がする。
俺は走っていた足を止め、後ろを向いた。
そこには……
——侍がいた。
「さむ……らい?……本物?」
俺は動揺しながら同時にワクワクしていた。
異世界での侍……という意味もあるが、
目の前に居るのは菊柄の着物を着て、刀を持った……美少女だったからだ。
俺の呟きを聞いた美少女侍が顔を驚きの色に変えた。
そして慌てて俺の方へ近づいてくる。
「⁉︎お、お主、侍を知っているのか⁉︎」
「あ、あぁ……」
急に近づいてきたことに驚き、変な返し方をしてしまう。
「ほ、本当か⁉︎……やはり侍はおったのだな……」
美少女侍は軽く微笑み、空を仰いだ。
「御爺様……貴殿は嘘は仰っていなかった……」
「……⁇」
全く状況が理解できない。
取り敢えずこの世界には侍という文化がなかったように思える。
しかしこの子の会話から察するに……。
……しかし、おかしい。侍を知らないこの世界の者が侍を語るわけがない……。
——もしや、俺と同じように……。
「あの……御爺様……とは?」
俺は確信を得る為に問いをかける。
「あ、あぁ……私の父方の御爺様なのだがな。名をサカモト リョーマと言う」
「えっ……⁉︎」
考えていたのとは方向性は同じだが内容の重要性が大きく変わっていた。
oh……よりにもよってあの有名人か……。
「どうした?」
心配してくれているのか頭を抱えてしゃがんでいる俺の顔を覗いた。
うん、顔がすっごい近い。……俺だって男なんだからドギマギぐらいするよ……。
うっ……黒廼好きの人からの冷ややかな目線が……。
「だ、大丈夫だ。それより助けてくれてありがとう」
「いや、通りがかったのでな」
と、美少女は微笑を浮かべる。
「そうだった、自己紹介がまだだったな。俺は柊 真矢。遠い東の国から来たんだ」
面倒くさいのでよくアニメなどで見る設定にしておいた。
「ヒイラギ シンヤ?珍しい名だな。私はライルナ=ヴァーゼッヘという」
ふむ、名前は全然日本っぽくない。
「気軽にライルナと呼んでくれ」
この世界は気軽に名前で呼んでいいのか……。
と、俺が少し驚いたような顔をしていると
ライルナは顔を近づけてくる。
「何かまずかったか?」
「い、いや!何もまずくはないよっ!少し考え事をしていただけだから……」
「そうか……ふふふっ」
「ラ、ライルナさん?」
「いや、おかしくてな、すまない」
ライルナはにこっと反則級の笑顔を見せた。
くっそ、可愛いじゃないか。
「ところでシンヤ、お主はなぜこんなところにいたんだ?」
「……あ、そうだ。近くに町とかはないか?」
「ふむ……この近くだとシルウィードじゃないか?」
手を顎の位置に当てて悩みながらライルナは言った。
「シルウィードか……まずそこに行こうかな……」
先が思いやられるなぁ……。
「はぁ、この先もあのおっさんみたいなやつがいるのか……」
俺はため息を吐く
「……良かったら護衛ついでに案内してやろうか?」
「マジで!?お願いします!」
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
こうして真矢は一人の侍、ライルナ=ヴァーゼッヘと出会った。
いや、出会ってしまった。
この出会いがこの
大きな影響を及ぼすのは今はまだ誰も知りえなかった話。
現実ステータスが皆無な俺が学生と勇者を両立したら。 未柊 @syusya
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。現実ステータスが皆無な俺が学生と勇者を両立したら。の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ネクスト掲載小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます