天使達の決議
ミカエルの話が終わると、他の三人は顔を見合わせた。
数秒してからガブリエルが口を開く。
「私達がセンセエを失ったのは、ミカエルが原因だと言いたいの?」
「別にそんなこと言っていないわよ。ただ、最近の行動を報告しただけですもの」
ミカエルは悠然と微笑み、小首を傾げてみせた。
「貴女達と違って、私はサラ姉様を殺してなんていないんだもの。何をしていたとしても、些細なことではないかしら?」
「ミカエルが行動をしなければ、センセエが死ななかったという点のみ見れば、立派な殺人だわ」
「そんなの結果論でしかないじゃない。貴女はサラ姉様を殺したと自白なさったのよ。でも私は殺していない。だから私は咎人ではないの」
勝ち誇ったように告げるミカエルに対して、ガブリエルは口を閉ざす。
だがラファエルが負けじと声を上げた。
それは先ほどのような力強い声ではなかったが、ミカエルに無視を許さない響きを持っていた。
「罪なき咎人となりたいのなら、ミカエル。貴女はもう少し雄弁であるべきだわ」
「何を仰りたいのかしら?」
「貴女、私が入った空き教室の鍵を開けたと言ったでしょう。開けてどうしたの?中に入ったの?」
ミカエルはその問いに対して可笑しそうに含み笑いをした。
「いやねぇ。言ったじゃない。私は鍵を開けただけよ。たったそれだけなんですもの」
「だったら私が使った、水の入った花瓶はどう説明するの?」
その指摘に、ミカエルは整った両眉の間に力を入れた。
「ねぇ、それだけじゃあないでしょう。用務員に話しかけたのはウリエルよ。貴女が唆したと言うのなら、用務員から話しかけてなきゃあ、おかしいじゃない」
「それは」
「いいじゃないの、ラファエル」
優しい声音でウリエルが制した。
「ミカエルは何もしていないって、自分で言ったのよ。その通り、何もしていないのだわ。本当に、何一つとして」
そうでしょう、と確認するように訊かれたミカエルは、先ほどまでの余裕は何処かへ捨て去っていた。
不満そうに、肯定とも否定ともつかない溜息を吐き出し、今度はのろのろとした調子で言った。
「私はサラ姉様を、殺していないのよ」
それに合わせるかのように、閉門を告げる鐘が鳴った。
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