5分もあれば落ちがつく、世相をうまく切り取ったショート作品集

いきなり繰り返して恐縮だがこの作品は「トイレで読む、トイレのためのトイレ小説」ということでここまででトイレと七回も言ってしまった。
そもそも「トイレ小説」とはなんなのか。せいぜいトイレを舞台にするなりトイレが登場するなりといった意味合いだろうが、すでに私はこの段階でトイレという言葉がゲシュタルト崩壊してむしろトワレに見えてきた。

それはそうと本作を取り上げたのは実に小説らしい作品だとも思ったからでもある。
トイレのときにでも読んでほしいライトな作品集なのをウリにしているわけだが、実際には私はトイレで読んだことはなくむしろ電車の中とかメールの受信トレイを開きながらとか蕎麦屋のトレイの上に携帯を置きながらとかそういうことの方が多くて、要はトイレにいないのにまるでトイレのなかにいるような気分にさせられるわけだが、そういう時間感操作などの誘導を果たす言葉の力が凝縮された芸術というのもまた小説の重要な一面なのである。

(必読!カクヨムで見つけたおすすめ5作品/文=村上裕一)

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