最終話 これから先はわからない。

 まぶたを開けば、雲がいくつか浮かぶ青空が広がり、そよ風が吹いていた。

 両手を頭の後ろに乗せて横になっていた僕は、おもむろに起き上がる。

 周りは草原があり、奥には森が広がっていた。

 人が住んでいる建物らしきものはどこにもない。というより、ここはどこだろうか。

「いつまで寝ているんですか」

 気づけば、僕の横に、明日香が立っていた。格好は屋上の時と同じ制服姿のままだ。

「これが、君の選択肢?」

「悪いですか?」

「別に、悪くとか思ってないけど。ただ、そうなんだと思っただけ」

「そうですか」

 明日香の返事に合わせて、僕は立ち上がる。

 お互いに手ぶらで、何も持っていない。

「これから、大変ですね」

「大変って、自分が選んだ選択肢だから、しょうがないと思うけど」

「しょうがなくないです。まずは、この先にある村に向かわないといけません」

 明日香が向ける視線の先には、草原にできている舗装されてない道が続いていた。

「村か……。どれくらいかかるんだろう」

「弱音を吐く暇があるのでしたら、さっさと歩いたほうがいいです」

 明日香は口にするなり、道の方へ足を進ませていく。

 彼女が選んだ選択肢。

 それは、「異世界に転生する」だった。

 僕と明日香は、とある世界に転生された。ちなみに、転生なのに、お互い、前と同じ姿なのは、リタのご愛嬌だろう。直前に彼女がそういうこともあるかもしれないと言っていた。

 ひとまずは、僕は明日香と初めての異世界で一緒に過ごすことになるらしい。

 まさか、「死んでください」と頼まれた相手というのはおかしいけど。

「何笑っているんですか」

 明日香が不満げな表情を僕の方へ移してくる。無意識に笑っていたらしい。

「ごめんごめん」

「死んでください」

 明日香は口にすると、目を逸らして、道の方へ向かっていく。

 僕は、「ごめんごめん」と声をこぼしつつ、明日香の後についていった。

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クラスメイトの妹に「死んでください」と言われてしまいました。。。。 青見銀縁 @aomi_ginbuchi

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