第3噺 この複雑な死因の兄妹に再会を!

兄side


この間俺がギルドで冒険者登録をした時、受付のお姉さんから妹さんはいるかと聞かれた。

確かにいるが何故そんなことを聞くのかと尋ねると、先ほど俺と同じファミリーネームの女の子が登録しに来たそうだ。

日本では佐藤なんて苗字はありきたりだったが、はたしてこの世界に俺と同じ苗字の奴なんているだろうか。

いやサトウなんて苗字絶対無いだろ、こんなファンタジー世界に。


そこで駄女神に問い質したところ、どうやら俺が死ぬ数時間前に妹も死んだらしい。

……それを早く言えよッ!!

お前それでも女神か!そういうことは俺が死んだ時に真っ先に言えよ!!

まぁ、過ぎてしまったことを気にしても仕方ない。まだ俺達はレベル1だし、この街から離れることはない。その内会えるだろう。

……そう思っていた時期が俺にもありました。



―二週間後―



「全っっっ然会わないんだけど!?」

「知らないわよそんなの!

受付の人によれば元気でやってるみたいだし良いじゃない、仲間も一人いるみたいだし!」

「いーや良くねぇッ!!凪の姿をこの目で確かめないと気が済まねぇ!

そもそもなんで同じ街にいるのに一度も会わないんだよ!!」

「なんでそこまで心配するのよ、仲間が出来たんなら普通安心するところじゃない?」

「お前は知らないからそんなこと言えるんだよ、アイツのロリコンホイホイ体質を!!」

「何の話をしているんですか?」

「ナギとは…?」


俺とアクアが酒場で口論していると、めぐみんとダクネスが頭上にハテナを浮かべる。


「いいかアクア!俺の妹にはな、何故かロリコンの変態が寄ってくるんだよ!!別に会ったこともない見ず知らずのオッサンが!!

「お菓子買ってあげるからオジサンと遊ぼう」とか、「パンツ何色?」とか「ノーブラ?」とか、挙げ句の果てには「一万で良い?」とか!!

人の妹を変な目で見てんじゃねぇええッ!!つか買春しようとすんな!!二次元なら構わねえけどリアルの子供に手ぇ出すなよ!!」

「落ち着いて下さいカズマ!!」

「ちょっと待てお前妹がいたのか!?」

「因みに聞くが凪の死因は?」

「えっと、変態に追いかけられて車に跳ねられて……」

「ほらな!!やっぱりロリコンのせいだろ!?アイツにはセコムがついてないと駄目なんだよ!!」


感情が昂って暴走してしまった俺の話に着いていけてない二人が慌てているが、俺は凪が心配なんだ。

だって引きこもりの俺に優しいし、彼女いない歴=年齢の俺に毎年バレンタインにチョコ作ってくれるし、俺がゲームしてたら隣に来て一緒にゲームするし!

こんな心優しい妹他にいないッ!!

普通なら妹というのは、引きこもりの兄に対して見下していたり罵倒したり、避けたりするものだ。

俺の妹は本当に良く出来た子だと思う、お兄ちゃんっ子だったから口の悪さは俺に似たが。

そんな妹だからこの異世界で一人にするのは不安なんだよッ!!この世界にロリコンがいないとは限らないだろ!?


「……こうなったら奥の手だ」

「ちょっとカズマ、何を…」


俺は席を立ち受付のお姉さんの元へ行って、ズカズカとカウンターの裏側へ入って行き、アナウンス室と書かれた部屋に躊躇なく入りマイクのスイッチを入れた。

勿論街のスピーカーのスイッチも忘れずに。


――ピンポンパンポン♪


『えー迷子のお知らせです。

日本から来たサトウ・ナギサちゃんサトウ・ナギサちゃん、お兄ちゃんがお待ちです。

至急冒険者ギルドへ来て下さい。

繰り返しま…』

「うわああああ迷子アナウンス止めろこの駄犬がぁああッ!!カエルさんの目の前に放置して帰った私が悪かったからぁああッ!!」


日本人にとって、迷子のアナウンスは恥ずかしいものである。

施設内に子供の大声が響き渡り、全員の視線が入り口に立っている少女の方に向けられる。

俺はマイクのスイッチを切るとアナウンス室から出て、酒場の方へ戻り妹の前に姿を現した。

俺の姿を見て茫然とし、ポカンと口を開けている妹に「よっ」と言って片手を上げた。

というか駄犬って誰と間違えたんだよ…見たところ元気そうで何よりだ。

駄犬という言葉に興奮している変態が一人いたが、いつものことなので気にしない。


「お兄…ちゃん?」

「うんお兄ちゃんだよ」

「佐藤和真?」

「はいカズマです」

「引きこもりの?」

「うん引き…っておい言わせんなよ」


俺だと再確認した途端、妹はボロボロと涙を流しながら俺に思いっきり抱きついて来た。

どうやら家族の顔を見て安心したようで、気が緩んでしまったのだろう。

俺は妹の頭を優しく撫で、背中をポンポンとゆっくり叩いてやる。

……ていうかお姉さん達「あらまあ」って感じの生暖かい目で見ないで!?やだもう恥ずかしッ!!


「うわぁあああんお兄ちゃああん!!」

「おーよしよし、寂しかったかー?」

「あのねっ学校の帰りにね!?たい焼き食べてたの!そしたらキモブタがね!?ハアハア言いながらお尻触って来てっ!吃驚してたい焼き落としちゃって!!そのまま逃げたら車がドーンってッ!!」


ついにキモブタと言うようになってしまったか妹よ……これからは妹の前では汚い言葉は自重しよう。

要約すると、学校帰りに買い食いしてたら変態に追いかけられて車に跳ねられた…ということだな。


「そっかーお前も災難だったなー、俺はトラクターをトラックと勘違いして轢かれると思い込んで失禁、その後ショック死だぞ?

いくら3徹してたとはいえ酷くね?」

「……お兄ちゃんカッコ悪い」ボソッ

「おい聞こえてるからな」


コイツ窃盗スティールしてやろうかと思ったが、漸く笑ってくれたのでまぁ許してやろう。

俺辛口の自覚はあるけど、妹にはつい甘やかしてしまうんだよなぁ…これも兄として生まれた性か。

クスクスと笑っている妹を見て、俺まで釣られて笑ってしまう。


「えー、ゴホン。そこのお二人さん?私達のこと忘れてないかしら?」

「「あ」」


その後俺はアクアの喧しい構って攻撃を受けながら、めぐみんとダクネスに質問攻めにあった。



To be continued…

――――――――――――

後書き

今回勢いで書いたので、会話などのテンポが悪いです。

日本人にとって迷子のアナウンスで呼ばれるのは恥ですよね…まだ妹小学生ですが。

迷子のお知らせは幼児~小学校低学年までのイメージがあります。それかお爺ちゃんお婆ちゃん。



この後ジャイアントトードーの粘液まみれになった幼馴染みが登場し、兄と再会。


「お兄ちゃん、雅也の死因も凄いんだよ!

ドラマ缶に入れられてコンクリートで固められて東京湾に…」

「沈められたのか。」

「お前ら兄妹揃って同じこと言うなよ」


という会話を繰り広げていると思います。

お互いのパーティーの自己紹介はちゃんと済ませたようです。

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