この素晴らしいロリコン共に災いを!
月兎。
第1噺 この哀れな妹に転生を!
妹side
目が覚めると、私は真っ白な空間にいた。
目の前には水色の髪の綺麗なお姉さんがいて、悲しげな表情で目を潤ませながら此方を見ている。
「ようこそ死後の世界へ。私は貴女に新たな道を案内する女神アクア。
佐藤
「え…」
あまりのことにランドセルが肩からズリ落ちそうになり、背負い直してから再び女神と言ったアクア様の方を向き問いかける。
「えっと…私死んだんですか?」
「ええ、そうよ…」
そう言った瞬間、アクア様はハラハラと涙を溢しながら私の目線までしゃがみ両手を掴む。
「そう!学校の下校中にたい焼き屋の良い匂いに誘われて、たい焼きを購入し買い食い!!
頬袋を膨らませ幸せそうに顔を綻ばせている幼い少女を見て、通りすがりの変態は貴女にターゲットロックオン!!
ハアハア鼻息を荒くしながらしぶとく追いかけて来る変態から必死に逃げた末、曲がり角から突然現れた車に跳ねられ死んだのよおおおおおッ!!」
「うわあああアクア様落ち着いてええッ!!」
あまりの悲惨さにアクア様は私を抱き締め号泣し始めた。そうか、私はあの時跳ねられたのか。
本当は私が悲しむところなのに、アクア様が泣き叫んで私に頬擦りするものだから、あんまり落ち込んでいない自分がいる……というかアクア様胸!胸当たってるから!!
「そんなのあんまりよッ!!こんな可愛い子供を厭らしい目で追いかけ回して!挙げ句にそのせいで跳ねられて死ぬなんて!!
しかも轢かれると分かっているのに、それでも触りたくてあの変態は貴女の後を追って車に飛び込んで同時に死んだのよッ!!
なんなのあの変態!!ここまでくるといっそ清々しいわッ!!でも安心して、あの変態は貴女と同じ世界には行かせないから。」
「同じ…世界?」
私の呟きを聞いて漸く冷静さを取り戻し、ポンと掌を拳で叩いてから「そういえばまだ言ってなかったわね」と言いながら、一旦私から離れる。
「佐藤凪沙ちゃん。貴女にはこれからどうするか、いくつかの選択肢があります」
「選択肢?」
「1つ、娯楽が一切無い天国と言う名の永久地獄で、肉体と言う概念を失くしてお爺ちゃん達とずっと日向ぼっこして過ごす。
2つ、記憶を全て失くして元の世界で赤ちゃんから生まれ変わる。つまり輪廻転生ね。
そして3つ、ゲームの様なとある異世界を脅かす魔王を討伐するため、その異世界に今の貴女の状態を引き継いだまま転生する。」
なんだか色々とツッコミ所が多いけど、取り合えず……ゲームの世界ならば是非ともそちらへ転生したい!!
今まで兄の影響でかなりのゲーマーとなった私にとって、最早そこは天国!夢にまで見た異世界!!
「是非とも異世界に行きたい所ですが、私はごく普通の小学生ですしまだ子供です。そんな私が異世界に行ったら即死なんじゃ…」
「異世界行きね!心配ないわ、行ってすぐ死んじゃうんじゃあ意味が無いから、何か一つだけ。向こうの世界に好きな物を持っていける権利をあげる。
それは、強力な固有スキルだったり。
とんでもない才能だったり。
これまで転生してきた人の中で、神器級の装備を希望した人もいたわ。」
そう言って、アクア様は辞書並みに分厚い大きな本を私に差し出す。
この中から選べってことか。
うーん、ファンタジーゲームならばやはり魔法が使えるのは必須事項!
ゲームで必ず魔法使いを選ぶこの私が、もし異世界に行って魔法が使えなかったら?
そんなの絶対に嫌だ!強い魔法とか使ってみたい!だからもし選ぶなら……ん?「魔法使いセット」?何これ。
┌────────────────┐
*魔法使いセット
魔力と魔力容量を大幅UP!
どんな職業に就いても、
全ての魔法関連のスキルを習得出来ます!
人間以外の種族でも、
魔法であれば習得可能!(一部例外は除く)
おまけとして空飛ぶ箒もお付けします!
目指せ最強の魔法使い!
└────────────────┘
うおおおなんだこのチート能力!!
魔法ならなんでも覚え放題な上に飛行用箒までついてくるなんて!
「アクア様!これでお願いします!」
「分かったわ、じゃあそこの魔方陣から動かないでね!
それとランドセルの中に少しだけお金入れといたから、資金として使ってちょうだい。流石に無一文じゃ子供にはキツいわよね。」
「ありがとうございます!」
「それとこれは、私からの餞別よ」
そう言ってアクア様は私の前髪をあげ、額にキスを落とす。私のおでこが淡く光った気がした。
「え、今のは…」
「貴女はまだ子供だし心配だから、特別に女神の加護を授けるわ。ちょっとしたお守りだと思ってちょうだい。
さぁ勇者よ!願わくば数多の勇者候補達の中から、貴女が魔王を打ち倒すことを祈っています!
然すれば神々からの贈り物として、どんな願いでも叶えて差し上げましょう!」
美しい女神様にデコチューされて頬を赤らめる間も無く、私の体はふわりと浮き白い光に包まれた。
To be continued…
――――――――
後書き
※アニメでは佐藤和真は朝にショック死となっていますが、こちらの小説ではWeb版の午後14時に死亡している方の設定にしています。
病院で有名なドジッ子看護婦が本来絶対に間違っちゃいけない系の薬を、点滴待ちしていた他の患者と間違えて投与され死亡するという死因です。
実際にニュースで似たような事件があったのでボツになったのだと思われます。
※小学六年生で妹である凪沙ちゃんが、年上の者に敬語もキチンと使い、何故ここまでしっかりとした子供になったかと言いますと…
兄は引きこもりのオタクです。
そして高校にも行かずずっと引きこもっている息子を咎めることなく、放置している両親。
そんな家庭なら妹は「自分がしっかりしなきゃ」と思い頑張る……はず、です。
なので、この小説に出てくる佐藤和真の妹はしっかり者の常識人で苦労人です。
*妹ちゃん設定
佐藤凪沙
小学六年生 12才 ♀
容姿:兄と同じ茶髪で1つの密編みを肩からたらしている。くりっとしたパッチリお目々。
異世界に来たばかりの頃は、死んだ時の白いワンピースに某子供探偵の様な茶色いランドセルという服装だったが、後に兄同様お金が貯まったら服を買う予定。
性格:素直でしっかり者の苦労人。
ゲーム好きのオタク。
兄に影響されたのか悪知恵も少し働き、兄譲りの容赦ないツッコミもする。
料理は得意で、その腕前は言動が辛口の兄も認めるほど。ロリコンホイホイなのは異世界でも変わらない。
必殺技はゴールデンキック(金蹴り)。
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