第2噺 この異世界初心者な妹に道案内を!

妹side


うわぁ…本当に異世界に来ちゃったよ。

どうも皆さんこんにちは、先ほど女神様に転生してもらってウハウハな凪沙です。

目の前に広がるのは、これはテンプレートですからと言わんばかりの中世風の街並み。

行き交う人々は人間以外にも獣人やエルフなんかもいちゃったりして、更にテンション上がっちゃいます!


「えーっと、まずはゲームのお約束であるギルドに行きたいんだけど、何処にあるんだろう…」

「あれ、凪ちゃん?」

「ん?」


声のする方へ振り返ってみると、そこには兄と私の幼馴染みがいた。

え、なんでこんな所に?

そう思っていると、幼馴染みは顔を輝かせこちらへ突進してきた。


「うぉおおお会いたかったぜ俺のマイエンジェルゥウウウッ!!」

「せぇいッ!!」

「ゲフゥッ!!」


抱き締めようとしてきた幼馴染みに必殺のゴールデンキック(金蹴り)をお見舞いすると、幼馴染みは地面に踞って悶える。

返事がない、ただのしかば…ゲフンゲフン。不本意だけどこの変態な幼馴染みを紹介します。


たちばな 雅也まさや 16歳。

佐藤家の隣人で兄の幼馴染みにして親友。

私にとっては幼馴染みというより、お隣さん家のお兄ちゃんって感じかな?

親友と言っても兄からの対応は雑で、他の人と変わらず毒舌を吐いても私達についてくる打たれ強い奴だ。

動物に例えると間違いなく犬。

その打たれ強さは感心するが、コイツは真性のロリコンだ。私がスカートを履いた時は、「パンツ見せてもらっても良いッスか!」と言って、兄に殴られるのがお約束となっている。何処の骸骨だお前は。


「なんでこの世界にいるの!?最近見かけないとは思ってたけど!」

「三日前お前らとコンビニで会ったじゃん?一緒に帰る時にコーラ開けたの覚えてる?」

「うん、何処のガキが振ったか知らないけど、ペットボトルから大量の泡とコーラが零れ落ちてたね。」

「あの時さ、隣に駐車してたバイクにかかっちゃってさ。拭くもの無いし三人で逃げたよな。

次の日学校に行こうとしたら、玄関の外で黒服のオッサンが二人待機してて、「うちの坊っちゃんのバイクどうしてくれるんじゃワレェ!」とか怒鳴られながら黒塗りの車に乗せられて……

その後ドラム缶に入れられてコンクリートで固められて東京湾に……」


沈められたのか。

「東京湾に沈めたろかボケェ!!」とか良くドラマや映画で聞くけど、マジでやる人いるのか…。

まさかそんな死に方をしたなんて…あまりの不幸っぷりに同情するわ。


「ど、どんまい。その変わりこうして異世界に来られたんだから良いじゃん!前向きに考えようよ、ね!

それで話は変わるんだけど、ギルドって何処に行けば良いの?」

「ああ、お前来たばかりか。ギルドなら俺も用事あったし案内するよ、ついて来て!」


そう言って私の手を取り、雅也は足を進めた。……恋人繋ぎしてきたので鳩尾を喰らわせてやった。



―冒険者ギルド―



どうやらギルドは酒場と一緒になっているようで、周りには沢山の冒険者がガヤガヤと賑わっていた。

私は雅也と共に、真っ直ぐ受付のあるカウンターへと向かう。受付は四人、その内三人は手が空いている状態。

四人の受付の内、二人は男性職員だった。

……私達は無言で美人な方の受付嬢の所に行く。やっぱり綺麗なお姉さんが良いよね、うん。並んででもお姉さんの所に行きたい!


「次の方どうぞー!今日はどうされましたか?」

「えっと、冒険者になりたいんですが…」

「あら、まだ小さいのにせっかちさんね。

では登録手数料が1000エリス掛かりますが大丈夫ですか?」

「え、そうなんですか?」


せっかちさん……なんかその言い方にキュンとした。

私は隣にいる雅也にこの世界のお金について教えてもらい、アクア様から貰っていたお金から1000エリスを支払った。

支払う際にカウンターが私にはまだ少し高くて背伸びしてたら、お姉さんから子供を見守る母親の様な目で見られた。

なんか恥ずかしい…。


「それでは此方のカードに触れて下さい。

これで貴女の潜在能力が分かりますので、潜在能力に応じてなりたいクラスを選んで下さいね。

選んだクラスによって、経験を積む事により様々なクラス専用スキルを習得できる様になりますので、その辺りも踏まえてクラスを選んで下さい」


ああ、さっき選んだ魔法使いセットの影響でステータスが凄まじい事になって周りが騒いだりするのかな。

ちょっと良い気もするけど、あんまり目立ちたくないなぁ……ただでさえ私子供だし此処では浮いてるのに。

私は内心不安になりながらカードに触れた。


「えーっと、サトウ・ナギサちゃんですね。ふむふむ……身体能力はそこそこと言った感じでしょうか、平均的ですね。

知力は平均以上で幸運は高い……って、はぁああああッ!?なんですかこの魔力は!!

魔力と魔力容量が尋常じゃないんですが、貴女何者なんですか…ッ!?」


ワォ、やっぱり驚かれたよ。

しかも周りの人達も注目してるし…このファンタジー世界にロリコンはいないと信じたい。


「あれ、スキルが既に備わってる……「女神の加護」!?噂で耳にしたことはありますが、まさか実際にそんなスキルを持った人がいるなんて!!」


あのおでこにチッスされた時のか、まさかスキルになるなんて思わなかった。

デコチューだけでスキル習得って凄いな。


「このスキルは女神様に祝福された者の証!女神様に愛された者しか持たないと言われている幻のスキルですよ!!

敵からの即死魔法と魅了チャーム無効、受けた攻撃魔法のダメージ半減!

余程強いモンスターに会わなければまず死ぬことは無いですね!」


え、そんなに凄いものだったの!?

私が選んだ魔法使いセットより凄くない!?

アクア様ありがとう!とんでもないお守りをくれて!!完全にチートだけどね!

これで安全に冒険出来る……って、お姉さんの大声で施設内がざわめいてるけど!


「これならどんな魔法職にでもなれますよ!

アークプリーストにエレメンタルマスター、アークウィザードにサモンウィザード等!」

「ん?エレメンタルマスターって…」

「エレメンタルマスターとは、精霊の力を借りて魔法を使う魔法職です。

通常の魔法も使えますが、精霊に協力してもらうことにより魔法の威力も上り、強力な魔法を放っても疲労感は他の魔法職の方より少なくて済みます。

優秀でとても魅力的な職業なのですが、精霊に気に入られないと能力を上手く惹き出せませんし、人柄が良くないとこの職業は難しいと言われているので、あまりなる人が少なくレアな職業となっています。

子供の貴女でしたら精霊も心を開きやすいと思うので、天職だと思いますよ!」


確かに妖精さんとかそういう類いの生き物は、子供に気を許してるイメージがある。

ファンタジー好きにとって、これほど心踊らせる職業はそう無いだろう。


「じゃあエレメンタルマスターでお願いします!」

「畏まりました、エレメンタルマスターとして登録させて頂きます!

改めて、冒険者ギルドへようこそサトウ・ナギサちゃん。スタッフ一同、今後の活躍を期待していますね!」


そうお姉さんが言い終わると同時に、施設内にいた人達から拍手喝采が起きた。

私は顔を真っ赤にしながら、皆にペコリとお辞儀した。これから宜しくお願いします!

さて、キャラメイキングも済んだ事だし…宿探しの前に装備を買い揃えますか!

私は拍手喝采の嵐に呆気に取られている雅也の手を掴み、ギルドを後にした。



To be continued…

――――――――――――

後書き

まだWikip〇diaにもあまり情報が載せられていないエレメンタルマスターにしました。

装備屋さんや服屋さんでのやり取りは長くなるので省きます。


「女神の加護」

もう完全にチートですね。

しかし小学生の女の子をモンスターが沢山いる世界に転生させるのはちょっと心配かなと。

兄は死んでも女神がいるから何度でも蘇生出来ますが、妹は女神がいないので死んだらそれまで。

なので、とりあえず即死魔法や強そうな攻撃魔法等から守ってあげようかと。

これならそう簡単に死にませんし安心です。


NEW!

サトウ・ナギサ

服装:深緑色のフード付きロングローブに、ゆったりとした黒のVネックノースリーブ。

薄く淡い茶色の短パン。ムートンブーツに白ニーソ。


公式の女キャラは殆どがスカートなので短パンにしました。冬は膝下までのもこもこワンピースに着替えます。

ニーソと言えば黒なのですがノースリーブが黒なので、靴下は白の方がバランスが良いと思い白にしました。

兄が深い緑のマントもどきをつけているので、妹も色を揃えてみました。

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