第6噺 この幼馴染みに回復魔法を!

妹side



「カエルさんは飽きたし雅也がトラウマ持っちゃったから…うーん、これなんてどう?

コボルトの群れの全滅。こないだ行ったフラメン湖の近くみたいだよ、報酬も結構貰えるみたいだし」


どうも皆さんこんにちは、良い杖をゲットしてテンションが上がっている凪沙です!

最近宝島という俗称の玄武のお蔭で大金を手に入れたので、当分は金稼ぎしなくても良いんだけど……。


折角精霊魔法を使えるようになったんだから、スキルレベル上げたい!!


というわけで、最近討伐クエストを黙々とやっています。

因みに玄武とは街の外に現れる巨大モンスターで、十年に一度甲羅を干す為に地上に出て来ると言われている。

地上に出てくるのは、普段は地中で生息している玄武が、甲羅に繁殖したカビやキノコや様々な害虫を日干しにする為だと言われているが、定かではない。

一つだけ分かっているのは、玄武は暗くなるまで甲羅を干すという事。そして玄武は鉱脈の地下に住み、希少な鉱石類をエサにする為、その甲羅には希少な鉱石が地層の様にくっ付いている。

なので、その鉱石を採って売れば、冒険者達は大金を手にできウッハウハになるのだ。


私達もそのウッハウハな冒険者の一人なのだが、漸く精霊魔法を使えるようになった私としては……レベ上げッ!!せずにはいられないッ!!


「コボルトって…ゲームでお馴染みの?」

「うん、メジャーモンスターのコボルト。弱いのに討伐金額はそこそこ高い、美味しい部類のモンスター。

弱いけど繁殖力が旺盛で、大量に増えると人を襲ってきたりもするから、見つけたらすぐに討伐依頼が出されるの。

依頼が張り出されるとすぐ皆受けちゃうから、このクエストが残っていたのはラッキーだったね」


まあ、受付のお姉さんから聞いたんだけど。

この世界の住人じゃない私は、ここのモンスターにそんな詳しくないからね。

雅也にも弱いならということで了承を得たし、私達は早速討伐へと向かった。



―フラメン湖付近―



「あ、いた」


コボルトらしきモンスターを発見した。

湖のほとりで魚でも捕まえようとしているのか、湖に入ってバシャバシャと暴れている。

折角ゴブリン討伐して湖に平和が訪れたと思ったのに…この湖はモンスターを呼び寄せるような何かがあるのだろうか。


私達は湖から少し離れた茂みに隠れたまま、コボルト達の様子をうかがっていた。

シベリアンハスキーみたいな顔をした二足歩行の獣人達は、鼻が良いのか私達の方を頻りに気にして、その鼻をひく付かせている。


私はその様子を見て、隣の雅也と顔を見合わせる。コボルト達は殆どが一ヶ所に纏まっており、今なら魔法で一網打尽に出来そうだ。

万が一討ち漏らした時に備え、雅也はそっと剣を引き抜いて私の方を見て頷く。

それを見た私はスゥ…と息を吸い、杖に力を籠め精霊魔法を唱える。


「暗雲に迷える光よ…我に集い、その力解き放てッ!!『サンダラ』ッ!!」


私の杖先から閃光が走り、コボルト達の群れのど真ん中に突き刺さる。

ピシャァンッゴロゴロゴロゴロッ!!という轟音と共に、湖に巨大な波紋と波を起こし、コボルトの大半が焼け焦げになって倒れた。

だが、私の精霊魔法のスキルレベルがまだ浅いせいか、数匹のコボルト達が魔法の影響範囲から免れ生き延びていた。


生き延びたと言っても、雷魔法なので痺れたようで、麻痺状態になっているみたいだ。

その隙に雅也が茂みから飛び出し、生き残ったコボルト達へ両手で構えた大剣を、大上段に振り上げて斬りかかりトドメを刺す。


「ふう、これで討伐完了だな!」

「おっつー、今日は楽勝だったね。早く帰って大衆浴場行こうよ、あそこご飯前になると混みだすから」


そう言って欠伸していると、ガサッと背後から音がして「危ないッ!!」と雅也が叫ぶ。

振り返ると、黒い塊が襲ってくるのが見えた。あれは……初心者殺しだ。

一言で言えば、猫科の猛獣。

虎やライオンをも越える大きさのソレは、全身を黒い体毛で覆われ、サーベルタイガーみたいな大きな二本の牙を生やしている。

鋭い爪を光らせ、前足を降り下ろしてくる初心者殺しを見て、私は身構えギュッと目を閉じる。しかし、想像していた痛みはやってこない。


「……?」


恐る恐る目を開けると、そこには両手を広げ私を庇う雅也がいた。いくら鎧を着けているとしても、今の私達がこんなモンスターの攻撃を受ければ、堪ったもんじゃない。


「雅也ッ!!」


ドシャッと崩れるように倒れた雅也の前に立ち、私は初心者殺しへ氷結魔法を放ち凍らせ、すぐに雅也の傍へ駆け寄る。

ガッチゴチに凍らせたので、初心者殺しは当分動けないだろう。それよりも雅也の傷が心配だ。

鎧を着けているので体は打撲と切り傷等で済んだみたいだが、顔に攻撃が当たったようで、左目辺りに爪跡があり血が止まらない。

もしかして失明したんじゃ…と想像し冷や汗が出る。


「ああもうなんで剣で受け止めないかなぁッ!!確かに私は攻撃魔法しかダメージ半減しないから、あの一撃で死んでたかもしれないけどさ!!」

「ハハッ…咄嗟だったからな。ルーンナイトが幼女一人護れなくてどうすんだよ」

「幼女言うな」

「それに…和真と約束したしな。何がなんでも凪ちゃんのこと、死んでも護るって。

そうでもしないとあの過保護な和真が、凪ちゃんが自分以外のパーティーに入ることを許すわけないだろ?」


いつの間にそんな話をしていたんだ、初耳だぞ。なんだよ雅也のクセに生意気な……らしくないことしちゃって。笑ってんじゃないよ馬鹿。

こんなことになるなら治癒魔法覚えておくんだった……雅也は固いから大丈夫なんて高を括っていた。


そう後悔して下唇を噛んでいると、雅也は疲れたのか気絶してしまった。


「ちょっと、こんな所で気絶されたら街に行って回復出来ないでしょ!?私みたいな子供が雅也を運べるわけないじゃんッ!!ちょっと起きてよ、ねぇッ!!」


体を揺するのは良くないので声をかけるが、起きる気配はない。寧ろ顔色が少し悪くなってきている、血を流し過ぎたせいか。

流石に死ぬまでには至らないだろうが、この状況はマズイ。先程凍らせた、初心者殺しの氷も溶け始めてきた。


「どうしようッ…誰か!誰かいないのッ!?」


すると、ガサッという音が聞こえ、「シーシャ!?」という声と共に青年が現れた。長い銀髪を一つに結び、神父の様な服を着ている。人を探していたのだろうか?


「シーシャ…?」

「…いえ、なんでもありません。それよりそこの彼は……」


そうだった!今は雅也が最優先だ!!


「お願いです、この人を街まで運んでくれませんか!?私を庇って怪我しちゃって」

「………ちょっと失礼」


そう言うと、青年は雅也に近づき手を翳し、治癒魔法をかけてくれた。

服装はそれっぽいとは思っていたが、まさかプリースト系の職業の人と遭遇するなんて!良かった幸運高くて!!


「ありがとうございます!助かりました!」

「そんな、当たり前のことをしたまでですよ。貴女の為ならどんな…こと……も…」


言い終わる前に、青年はドサッと倒れた。


「えッ!?ど、どうしたんですか!?まさか貴方も怪我を…」

「…………を下さい…」

「え?」

「貴女の…血を……」

「え……」


そう言って、青年は勢い良く私の首筋に噛みついた。



To be continued…

―――――――――――――

後書き

久しぶりの更新です。

いきなりピンチになりましたね、さぁこの青年の正体は一体……?なんて言わなくても、誰がどう見てもすぐに分かっちゃいますよね。

因みに雷魔法のサンダラはお察しの通り、某ファンタジーゲームの魔法です。詠唱の言葉はタクティクスからきています。

タクティクス大好きです、最後悲しすぎて号泣しました。あとサ〇フロンティア2も好き。


青年

年齢不詳

長い銀髪を後ろで一つに結んでおり、エルフ程ではないが耳が少し尖っている。

チャームポイントは少し尖った犬歯(笑)

神父の様な服を着ている。身長は雅也より少し高い。雅也の頭半分くらい?

どうやら敬語で喋るようだ。

見た所プリースト系の職業のようだが…?


今のところは、まぁザッとこんな感じですね。人探しをしていたようですが、森ではぐれたんだとしたら災難ですよね。

次回、青年のことが明らかに!!

幼馴染みは回復してもらったので、もう血は止まりましたのでご安心を。

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