異世界スポーツバーで祝杯を!

 現代日本で言う「スポーツバー」の異世界バージョン。テレビは無くて、水晶でスポーツ観戦をする。主人公は他種族に馴染めない少女。少女の見聞を通して、物語は進んでいきます。ライトノベルにしてはセリフは少なめで、謎のスポーツの解説が多いが、何故かサクサク読めてしまう。最後の方は異世界に平和をもたらしたはずのスポーツが、政治的に危うい面を見せるなど、一気読み必至の作品です。そして最後の最後には恋愛要素もあり、あらゆる面から魅せられました。主人公の少女の視点から描かれているのに、少女の気付かない心の成長や変化を、くまなくすくい上げる書き方はさすがに玄人のなせる業です。スポーツを通じて他種族を敬遠していたはずの少女が、人間の話を聞くようになったり、馬鹿にしていた少年を応援していたり、とにかくスムーズに心の変化が描かれています。
 少女がこのスポーツの初心者という設定から入るので、少女の理解と読者の理解がリンクするのも良かったです。謎のスポーツに、いつの間にか感情移入して、選手たちを応援したくなる素敵な作品です。
 スポーツが好きな方も、苦手な方も、この作品を読んで祝杯を挙げましょう。世界の平和のために。

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