本作は「面」をテーマにした、もう少し正確に言えば、その世界の暗闇めいたエピソードを「面売り」なる人物とともに見ていくホラーアンソロジーである。
面とはいわゆる「お面」のことだが、転じて人物の顔などを示す言葉でもある。
実は、この面売りが登場するというだけで、作品それ自体はかなり多様である。
口裂け女の化粧から蟇蛙の呪いに至るまで、ホラーといえばホラー、面が関係しているといえば面が関係しているが、かなり趣の異なったお話が展開される。
中には、小悪党の悪事を、面売りがちょっとした「必殺仕事人」として撃退するものもあるが、学校の怪談めいた少し不思議な話から、かなりグロテスクな表現で読者の背筋を凍らせてくるものもある。
本作を読んでいて思うのは、ジャンルとは文体なのだという素朴な事実だ。
私たちは様々な文体を本作で楽しむことができる。
そして、そういった異なった文体による小話を、言わばまたぐような形で面売りが登場していることに気づくとき、キャラクターが文体差を越境しているという事実にもまた気づくのである。
(必読!カクヨムで見つけたおすすめ5作品/文=村上裕一)
『面』をテーマに奇妙で奇怪な物語がオムニバス形式に出てくるのは自分好みでした。
多種多様な意味や物語を内包する『面』だからこそ、バラエティに富んだホラーファンタジーとして成立しているのだと思います。そのバランスも絶妙でした。
作品全体を通して『モノノ怪』を観た時のような印象を受けました。
ただもう少し『オチ』の部分に気を配って、全て分かりやすく解明してしまうのではなく、ある程度読者の想像力を信用して『ぼかし』てみるのも手法として選択できるのではないかなと思いました。
更にこれも個人的な好みの問題ですが、連作を投下するより短編形式のままで進んでいき、その中にストーリーを組み込んでいってほしかった気もします。
コメディな会話パートも微妙に作風とズレているように感じ、異質だったり飄々とした部分は『面売り』という強い個性を持ったキャラに任せても良いんじゃないかとも感じました。
とは言えやはり好きなジャンルですので、今後この物語がどのような『面』を見せてくれるのか、期待したいと思います。
キャッチ見た瞬間で面白いと確信しました。さっそく三話まで読ませて戴いてのお薦めレビューとなります。
お面のお話……。ホラー好きならにやっとするかも知れません。しかし、この物語には、ある1文が織り込まれています。
「言葉には力が宿ることがあるからね。馬鹿に出来ない」
ただのホラーではない。言葉に力が宿る面妖なホラーです。なるほど、内容は怪談のようでもあり、近年のホラーラノベのようでもあり、純文学のようでもあり。昔話の懐かしさも感じる。
お面を中心に、多方面からの「面妖とは」を追い求め、言葉も大変丁寧に扱われているところに好感が持てました。
テーマ(面妖)がすでにしっかり据えられているので、読み手としては、「どんなお面のお話が?」とわくわくさせられます。
ときおり落語のような洒落たお話もあったり、ちょっとぞっとする展開だったり。人は色んなお面を被りますからね。
貴方も共感できるお面が見つかるかも知れません。
どうですか?面妖なホラー、是非ともお薦め☆☆☆で。