春の雪

春の雪

　もうすっかり暖かくなってきたと思っていたのに、

今日は、はらはらと雪が舞っていた。

　春に降る雪はエンジェルティアーと言って、天使たちが花嫁を祝福しているのだと、子供の頃に親戚のお姉さんから聞いたのを思い出した。

　学生のころから好きだった人と結婚式をあげる私を天使たちが祝福してくれているのかもしれないと思うと、思わず笑みがこぼれた。

「え、なに？ どうしたの？」

『ううん。なんでもないよ』

　小さな表情の変化にもすぐに気づいてくれるこの人が愛しい。

　天使にまで祝福してもらったからには、頑張らないと。そう思った。

「雪が降ってるな」

『そうだね』

「暖かくなってきたと思ったのにな」

『そうだね。でもね、春に降る雪ってね……フフフ』

「なに？ 気になるじゃん。言ってよ」

『フフフフ。ひ・み・つ！』