介護職は本当に過酷です。都会の事情は分かりませんが、地方になると御年輩の方が多く、若者がいないので、とても過酷だと思います。家族の介護ですら大変なのに、血のつながらない御年輩の方を介護する。しかも笑顔で、優しく。小生にはとても務まらない仕事だと思いました。だからこの作品を読んだ後、「これって、フィクション?」と思ってしまいました。もしかしたら、ノンフィクションなのではないかと思ったほどです。
ただ、仕事に優劣があるのか? という思いもしました。この作品の主人公は、仕事の優劣にこだわっています。しかし何を持って優劣をつけているのかが少し分かりにくかったです。
介護職を考えている人に、どれだけこの仕事が過酷かという一つの指針になる作品です。
私は医療従事者で、要介護者の方と接する機会も多いです。とは言っても、精々車いすを押したり道案内をしたりお話をしたりとかその程度です。それでも、高齢者の方との接するのは凄く気を使うし(耳が遠いから大きな声でゆっくり喋らなくてはいけないだとか)大変だと思います。
介護のお仕事は本当に重労働でありながら、賃金の面では全く割に合わないと思います。でも、高齢の方がどんどん増えていく今の時代では、介護士はもちろんそうでなくても目を背けられない状況になってきていると痛感しました。
それでも、人手不足だから誰でもこなせる仕事ではない。人付き合いや責任、自分のメンタルなど介護の厳しさを賃金の面だけではなく多方面から描かれている素晴らしい作品だと思いました。
読んでいる内に思いました。介護にかかわる人間全てが
日本人特有の『思考停止』に陥っているって。
この状態、僅かでも救いがあるなら『思考停止して一点突破を
図る』という『余計な事を考えない、思考停止ならではの
メリット』もあるのですが、介護の世界は『先が見えない
から思考停止して業務をこなす』という悪い面が噴出しています。
業界の悪い面を利用者から隠すために、思考停止して
溢れる思いは鬱病や集団苛め、新人への教育と言う名のイビリと
して現れる。
登場人物の皆さんや読んでいる私、もしかしたら作者様も、口に
出してはいけない『ある事』を思っているんでは。
決して口には出せません。でも、文中から溢れる絶望感と閉塞感
は堪らないものがあります。
最後まで読むのには勇気がいります。でも作者様には、介護業界
に対する想いを最後まで書き切って欲しいと思います。
介護業界や用語がわかりやすく表現されており、抵抗なく読み進めることができました。
物語は始まったばかりですが、これからの展開に期待してしまいます。
世間では、介護職の重要性が説かれる一方で、介護に関する事件が過度にバッシングされている感が否めません。
報道のマイナスイメージで介護業界に背を向けてしまうかたも多いのではないでしょうか?
また、やむを得ず親が介護サービスを利用したり、入所した際に「親を見捨てた」と見なされる風潮は今も根強いものです。
小説を通して、多くのかたに、少しでも介護業界に興味を持って頂きたいと思いました。
そういった希望もあり、この作品をおすすめさせて頂きます。