運と愛

らいおんはーと

拝啓、小鳥遊アイさま

拝啓

 近頃は寒い日々が続いておりますが、いかがお過ごしでしょうか。

あなたと初めて出会った12月6日も、同様に寒い日だったと記憶しております。


 本題に移りますと、私はあなたと過ごした日々に対するお礼の気持ちをお伝えするため、この手紙を綴っております。あなたと共に味わった数多の苦楽は、いま私の人生においてかけがえのないものとなっており、全てが私の財産です。


 近々、直接お礼に上がりたいと考えております。ご都合のよろしい日時をお返事頂ければ幸いです。酷寒の折柄、くれぐれもご自愛下さい。


                                    敬具


20XX年X月X日

                                福田トモカズ



小鳥遊アイ様





「─さて、と」

 は、書き上がったばかりの手紙を便せんに入れて、厳重に封をした。

(今日は寒いから、一枚余分に羽織っていこう・・・)

 壁が薄いせいで隣の様子が丸聞こえの安アパートを出て、近くのポストへと向かう。

(返事がくればいいのだけれど)

 誰に向かって言うわけでもなく、ボソっとつぶやいて便せんをポストへ投函した。


─今日はどうやら、気圧が低いようだ。

「ひと雨降るかもしれないな」

 は家に雨傘を取りに帰ることにした。


 安アパートへ帰るまでの間、黙々と歩くのもシャクなので、かつての身に起こった「運」と「愛」にまつわる幾多の思い出に浸ることにしよう。


 よろしければ、あなたにもお付き合い願いたいものだ。

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