ホラーに欠かせないのが「生命の危機」と「警告」。
前者は言わずもがな。
「殺人鬼や悪霊に追われる」のと「万引きGメンに追われる」のとでは危機感がまるで違う。
Gメンも描写次第で面白くなりそうだけど。
いや実際面白いんじゃないか? 内申点に響くのを恐れる学生とか、アル中故にワンカップパクって早く飲みたいダメな大人とか。
それはひとまず置いといて……。
人間が最も恐れるのはやはり「殺される事」でしょう。殺されるまではいかなくても、死に等しいような耐え難い苦痛は誰だって嫌だ。
幸運にも日常で死を予感しないからこそ、非日常的な状況に恐怖し、感情を刺激される。
もはや麻薬みたいなものですね。死ななきゃホラーにならないくらい麻痺してくる。
後者の「警告」がミソ。
ゾンビ映画なら、パンデミックがあったり住人の様子が変だったり。
はたまた怪しい人に「絶対に○○するな」と言われたり。
そういう前フリがあるからこそ、読み手は「これからああいう展開になるのか」とか「しちゃダメなんだけど、コイツするんだろうな」と覚悟するわけです。
本作は「生命の危機」は勿論、「警告」もキチンと序盤に立てております。
人形を捨てるな、とか。嘘をつかなきゃ生きていけない人もいる、とか。見ようと思った未来しか見ない、とか。
誰かに忠告されるタイプなら、読者もすぐに感づく。そしてその警告を無視する結果となるのを覚悟(ある意味期待)する。
それとは別に、伏線として後から効いてくるタイプもあります。
サメ相手に一転攻勢しようと背後を張ったら、序盤で怪我した所から血が出ていて……みたいな。あまり良い例が思いつかない。
これは3話目が当てはまりますかね。「私が先だから」という台詞がガツンと脳を揺らしてきます。
短編なので、余計な要素を何一つ加えず、最短距離で駆け抜けるために、スピード感も読み応えもある。
文字のみでホラーを表現するのは大変難しい印象があるんですが、お見事でした。まだ半分くらいなので、これから最後まで読み切ります。
執筆お疲れ様でした!