亡くなっても忘れられない。どうしても会いたい。この切なる思いは届くのか

神社の神主で普通の人には見えないモノが見える力を持つ宮子。恋人である修験者の寛斎と共に物語は進んで行く。

ある日、稲崎という男が宮子を訪ねてくる事から全ては始まっていく。
亡くなった婚約者に会いたい為に、神話に出てくる「黄泉比良坂」を捜すと言うのだが……。彼は神話の黄泉比良坂に執着し、亡くなった恋人に会いたいと暴走してしまう。それによって、女児が行方不明になってしまう二次被害の事件が発生してしまう。

やがて、稲崎を追う宮子は共犯者として意外な人物を見つけてしまうのだが……。


果たして、稲崎は神話の世界へ踏み込んで、かつての恋人に会える事が出来るのでしょうか?稲崎を追った宮子達は無事に、現世に帰る事が出来るのでしょうか?

この物語は、「かけまくもかしこき」の続編であります。

神道において禁句とされる呪術を使い、神の許しを得ない領域まで踏み込んでしまう彼等に、神の怒りは落ちないのでしょうか?彼等は幽界まで行き、自身の望んだ結果を手に入れる事が出来るのでしょうか?

愛する人を失って失意の底まで落ちていく心の闇と暴走する心情。どうしても諦めきれない情念と執念。何も出来ない自分に対する悔しさ。踏み越えてはいけない所まで追い詰められた切なる思いと深い愛情が共感し胸を打ちます。

黄泉の国に行ってしまった稲埼と、無事に帰って来れた宮子と寛太。それぞれの選択した道が、この作品の根底にある問いなのかもかも知れません。

誰もが死別とは別に、一度はこのような理不尽な別れの思いをすると、遣り切れない感情にリンクしてしまうのではないでしょうか?

日本神話と神道の和風ファンタジー。読み進めていく内に胸が熱くなってしまいます。日本神話の世界。面白かったです。

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