カクヨムコン短編に投稿しました読んでください

 次のレースはラーさんと卑弥呼さんと競うらしい。いや無理っしょ。


『二人にはちゃーんとデバフかかってっから安心しな!』


 やらない言い訳をさせてくれない……実際勝てるのか?


「やるだけやってみるのじゃ」


「怪我しないようにな」


『その部屋に課題がワープしてくるぜ。部屋そのものが変わったりもするから、二人で協力して突破してくれ!』


「今更だが卑弥呼さんがっつり目立っていいのか? 葛ノ葉って秘密の一族だろ?」


「よいよい、これは身内のみのイベントじゃ。大抵はおぬしの鎧関係か、勇者科と神々じゃろ」


 改めて見ると、俺の知り合いは少なめだ。人間は知っている王族と一年生くらいだろうか。メインの客層は神だろう。


「気にしたら負けか」


「うむ、わしはもう楽しむことにしたのじゃ」


『一発目はこれだ!!』


 部屋が一瞬光りに包まれ、何やら喫茶店っぽい場所に変わっていた。


「なんだこれ? バトルじゃないのか?」


『テーブルにあるカップル用のジュースを二人で飲みきれ!!』


「そういう方向かよクソが!」


 相手の部屋も同じ作りだ。飲み物はストローが二本刺さっているが、それほど量は多くない。


『ちなみに遅れた方は次の課題の量が増えるぜ』


「対戦パズルゲームみたいじゃな」


「神がゲーム脳だとこうなるのか」


 あっちも飲み終わったみたいだ。相手が神と超人だが、こういうゲームなら圧勝されることもないのかもしれない。バトルよりは勝率上がるか?


『続いてパンケーキ! お互いに食べさせ合わないと追加されるぜ!』


 普通の二段パンケーキだ。はちみつとクリームといちご付き。


「いいだろう、チームワークを見せてやるぜ」


 リリアが素早く切り分ける間に、俺が蜂蜜をかけてフォークで刺す。そしてクリームを付ける頃には食べやすいサイズになっている。あとはリリアの口に運ぶ。


「めっちゃうまいのじゃ。ほれ」


「ほー……やたらうまいなこれ」


『お菓子の神完全監修だ! まずいもんは出さねえぜ!』


「なんにでも神っているなあ……」


 一方でラーさん卑弥呼さんは普通に食っている。しかも速い。


「はいあーん」


「あーん、美味しいね。こうしていると新婚に戻ったみたいだ」


「うふふ、ではもっと食べてくださいな」


「普通にいちゃついとるのう」


「ハートが強い」


 あの尋常ではないメンタルは素なのか開き直っているのか。おそらく前者である。


『お次は目隠しスイカ割りだ! 遠くにあるスイカを目隠しして先に割った方が勝ち! 誘導するのは女側だ。男側は目隠しをして声に従え』


 遠くにスイカが見える。ほぼ点やん。通路長いな。


『当然だが障害物が出てくるから必死でやるように』


「超怖いわ」


「まあなんとかやってやるのじゃ。集中するのじゃぞ」


 俺とラーさんが目隠しをしてスタート地点に立つ。本当に見えないな。ものすげえ不安だよ。頼むぞマジで。


『相手側の声は聞こえないようになってるぜ。スイカは本物じゃねえからぶっ壊していい。ほいじゃスタート!!』


「ジャンプ!」


 反射的に前方へジャンプ。同時にガコンという音が下から聞こえた。


「まさか落とし穴か」


「着地に集中じゃ」


 おっといけない。足場はちゃんとあるようで、着地は簡単だった。


「右ガード!」


 とっさにカトラスを抜いて右に構える。するとクッションのようなものがぶつかってきた。俺の上半身くらいの大きさっぽいが、威力はない。難なく止めたが、つまりこういうのがレベルアップするということだろう。


「ジャンプ!」


 さらに前方にジャンプ。さっきより足場が小さいな。すり足で調べる癖でもつけるか。多少ゆっくりでも危険が少ない方法で進みたい。


「意外と体幹あるのう。わしらが鍛えておるからじゃぞ。そこからしゃがんで進むのじゃ」


「はいはい、感謝しておりますよ」


 しゃがみながら進むと上に何かある。天井っぽいが触りたくない。発火したりしそうだし、見えないってのは色々怖いな。


「しばらく歩くとトランポリンじゃ」


「目隠しで!?」


 無茶言わんといて。つま先で注意深く探ると、柔らかいものがあった。


「その場で何回か跳ねようとか思わぬことじゃ。飛んだらもう次へ行く。よいな?」


「了解。やってみるさ」


 これはためらうとアウトだな。躊躇せず一気に踏み込んでジャンプした。


「前から砲弾!」


「砲弾!?」


 横に回転しながらカトラスで防御すると、刃を何かがかすめていった。


「あっぶねえギャリっつったぞ!?」


 結構なでかさだ。撃ち殺すというよりは押し戻すだろうか。どっちにしろ怖い。


「走り抜けろ!」


 背後から何かが出てくる気配がある。上下左右からクッションでも出ているのだろうか。とにかく走るしかない。


「そこからぬるぬるの床じゃ」


「うおおぉ!?」


 なんか異常に滑る床になった。慌てて床に剣を刺すが、これまともに進めるのか?


「ふふっ……生まれたての子鹿みたいに進むのじゃ」


「ちょっと笑ってるのわかってっからな!」


 ぷるぷるしながら進むしかない。下手にジャンプとかしようものならどうなるか……いかんいかんきついって。マジでゆっくり進むしかないぞ。


「そこ過ぎたら普通のエリアじゃ。がんばるんじゃよ」


「おおぉ……おおっ!? うおお!? よっしゃゴール!」


 何度も転びそうになりながら安全地帯へ。こういうバラエティ番組みたいなのは経験がないから逆にきつい。


「前から面攻撃がくるのじゃ!」


「どうすんだよそれは!?」


「魔法で押し戻すんじゃ!」


「ライトニングフラッシュ!!」


 魔法が当たる手応えからして壁が迫ってきているな。本当に押し戻すしか方法がないじゃないか。


「これどうすればいい!!」


「右側に抜け道があるのじゃ!」


 魔力の流れで通り抜ける場所を探る。確かに人間二人分くらいの隙間があるな。これ目隠しで通す予定なの? 設計ミスってない?


「ええいこの程度!!」


 魔法に関してはそれなりに自信があるんだ。なんとか抜け出てやった。


「次左! その次右!!」


「クソゾーンやめろ!」


「トランポリンで上へ!」


「うおっ!?」


 やはり目隠しで走りながらトランポリンは無理だ。ジャンプのタイミングをミスってバランスを崩す。


「まだだ!」


 背中から雷の足を生やして強く踏み込む。そのままジャンプしてなんとかくぐり抜けた。少し息を整えよう。


「次は階段じゃ」


「しんどい……純粋に体力がもたない」


 階段が長いんだよちくしょう。本当に地形自由に変えやがるな。階段は踏み外すと危険なので、ゆっくりと登る。これが地味にストレスになるのだ。


「狭くなる平均台じゃ。その先にスイカが置いてある。もうちょっとじゃよ」


「安全に、安全に終わりたい」


 背中から二本ほど雷の腕を生やして平均台を掴む。これでよし。多少動きやすくなった。


「そこじゃ横斬り!」


「雷光一閃!」


 手応えあり。破壊した瞬間に目隠しが取れて地形が戻る。


『両者スイカ破壊! やはり戦闘ではラー卑弥呼チームがわずかに速い! 結構デバフかかってるはずなんだけどな』


「おつかれ。よくやったのじゃ」


「おつかれ。はあ……疲れた。次はバトルじゃないといいな」


 休憩所で水を飲んでベッドに寝転ぶ。ここで三十分の休憩を挟んだ。回復魔法でなんとか次も行けるくらいにはなった。さて次のお題は……。


『次の舞台は学園の教室だ! 両片思いの二人は、放課後に演劇を見に行きたい! だがなんとなく照れくさくて誘えない!』


「なんか語り始めたぞあいつ」


『そんな中、どっちがどう動いてより青春っぽくなるのか! よりラブコメできた方が勝ちだ!!』


「急にコントやらされる身にもなって欲しいのじゃ」


 企画考えたやつアホだな。まずラブコメの定義がわからん。審査員が納得するものを知らんから、プランも立てられない。リリアになんとかしろと目線を送るが、そっちから誘え誕生日だぞという視線で返される。


「あーもう……」


 待てよ? ここで雑に誘うとポイントが低くなるのか? 雑じゃない誘い方を知らんぞ。リリアから助け舟を出そうという気配がない。完全に遊んでやがるな。


「このへんにい面白い劇団の公演、来てるらしいっすよ」


『ネットミームっぽくして照れ隠しするのは禁止デス』


「なんでわかるんだよ!!」


『あれこがリアルタイムでいろんな世界のミームと照合してるデス』


「おのれアカシックレコード」


 小細工を封じてきやがる。なんでそんな本気なのさ。


「今日暇か?」


「うむ、なーんもやることないのじゃ」


「ならちょうどいいな。劇見に行こうぜ」


「うーむ、どうするかのう」


「まさかの裏切りだよ」


「わしでなくともよくないかの?」


「……ん? えー…………察した。もう誰も残ってないだろ。どうせお互い暇なんだ。軽い感じで見に行けばいいんだよ」


 こいつここぞとばかりに俺から色々引き出そうとしやがって。誕生日だからギリ許すが、これは長くなりそうだぞ。


「青春とときめきが足りんじゃろ。女の子はそんな感じで誘うものではないのじゃ」


 なぜこんな無駄な心理戦を仕掛けられているのか。お前これ協力しないと勝てないんだぞ。


「軽い女ではないのじゃよ」


「むしろクソ重いもんなお前」


「そこはまだよく知らん学友設定じゃろ」


「学生らしく遊びに行こうぜ!」


「下手くそか」


「話は聞かせてもらった!」


「なんか入ってきたー」


 ラーさんが学生服で立っている。美形だし若めの顔だから似合っていて腹立つわ。そのキメ顔をやめろ。


「いつからそこに!」


「……?」


「いや不思議そうにされても」


「言ってみたいセリフというのはあるだろう?」


「ノリで乱入しただけじゃな」


「安心したまえ。やることはわかっている。お手本を見せてあげよう!」


 ラーさんが自分のうしろを見せるも誰もいない。


「ちょっと準備に時間がかかっているようだね」


「ぐっだぐだじゃねえか」


 今回ずっと疲れるわあ。

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異世界美少女達よ、ぼっちだった俺を攻略できるもんならやってみろ~最強無敵の力はハーレムラブコメに使うらしい~ 白銀天城 @riyoudekimasenngaoosugiru

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