複雑に絡み合った人間関係、前後する時間軸、変わる視点。最初は点でしかなかった数々の出来事が、次第に繋がっていくのが見事。最後の最後ですべてのピースがぴったりとはまり、謎がすべて解ける。
渡し舟なる万能な組織の存在がやや引っかかるが、そこはそういうシステムだと飲み込んだ。物語の本質的な部分とは関係ない。

焼却炉に身を投げた女子大生が「私が生きている限り、あいつはずっと傍にいる。（…）この死を持って、私――相澤恭香は自由を手に入れるのだ」
という遺書とともに大きな謎を残したことから物語は始まった。

しかし、必ずしも相澤恭香が「なぜ」死んだのか、そして「あいつ」は誰なのかが重要なわけではない（それは作中ではっきり明かされるのだが）。というのは、本作で重要なのはむしろ『人生相談センター～渡し舟～』の存在だからである。

これは「傍観」「幇助」「模倣」「転換」という四つの方法で自殺者をサポートする組織だが、特に後者の二つにはギミックがある。
模倣は、自殺を別な動機や事件の出来事に仕立て上げること。
転換は、いわば自分を死んだことにして別な人の死体を用意することだ。

恭香がこの仕組みを利用したことは想像に難くないわけだが、むしろ問題は、他の人々が"渡し船"を利用したことによって奇妙に物語を捻っていくところだ。

そこでは好意と殺意がすれ違うのとともに、偶然と必然が交錯しているのである。

（必読！カクヨムで見つけたおすすめ５作品／文＝村上裕一）

　被害者視点から話が進んでいくストーリー展開。初めは人間ドラマを描いた群像劇だと思いましたが、警察の視点から徐々に入れ替わっていた人たちの正体が剥がされていく様が非常に面白かったです。
　何より物語全体の雰囲気が独特であり、世にも奇妙な物語を彷彿とさせるような淡々と進むホラーサスペンスが魅力です。
　
　物語の構成、世界観、文章表現、テーマ性、どれをとっても高水準の物語です。暗い作品が好きで世にも奇妙な物語などが好きな方には是非ともオススメの１作品です！

　一見、無関係な登場人物が落とす影が交錯する話や文章表現に
作品の世界観が込められています。
場面が切り替わり、時間軸が変化しても、「彼」を探さずにはいられません。

　ついに完結してしまいましたが、
絡みつく人間模様は、何度も読み返したくなります。
完結、お疲れ様でした。
推敲後の『好意と殺意の狭間の住人』。
新作の更新も、楽しみにしております。

３章「ゴッドブルー」まで読んだところでのレビューです。

レベルの高い群像劇ミステリーです。一つの事件に、いろいろな人の行動、他の事件が絡まっていく。

軽いところのない、一般文芸の雰囲気。しっかりした文章と、ストーリー運び。ネット小説の平均的レベルよりは、はるかに高いところにあります。そして、大人の雰囲気。

きちんと、現実の社会で生きている人々を描いています。キャラだとか、そんなのではなく、登場人物がリアルであり、だからこそ物語がリアリティを持っています。

普通に、本屋で買った小説を読んだ気分でした。

いくつもの死の影には、ある不可思議な商売をする男が暗躍している。

各連作短編は、どんでん返しあり、後味の悪い結末ありと現代社会の人の心の闇に鋭く切り込みつつも、読者を飽きさせない巧みな構成になっています。

「笑うセールスマン」や「スカイハイ」などの系統が好きな人はまずはまるでしょう。

いつか、『彼』自身の正体にも迫って欲しいです。

女子大生の自殺事件、その恋人を名乗る男性の自殺事件。
その背景に居るのは謎の自殺斡旋企業。
人物を辿れば辿るほど、新たな人物が芋づる式に浮上しては自殺事件に関わって行く……。

倦怠期の夫婦、浮気相手との関連性。
どこまでも読んでも終わりが見えない、スパゲティ・ソースのような謎、謎、謎……！

恐らく文春文庫や新潮文庫などの堅いサスペンスを対象にした小説だと思います。
カクヨムも角川文庫が参入しており、石持浅海先生と言った推理作家が試し読みを投稿していますね。

その系統が好きな人なら、きっと本作も合うと思います。

その文言の先にきっと何かある、そう思わせる文脈です。その先に待つものは？