瀬戸内レモン

作者 市來 茉莉

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★★★ Excellent!!!

 瀬戸内にあるいくつかの島のなか、柑橘類を育てるためにあるようなその島で。
 珈琲屋の企画営業マンの『涼』と、若くして未亡人、亡夫が遺した農園の経営者となった『珠里』が再会する。
 かつては同級生だったけれど性格や考えの不一致から張り合っていた二人は、十数年ぶりの再会だというのにいきなり衝突するほどの仲。
 けれどスイーツ、ビジネス、過去を通じて心通わせながら、立ち止まっていた二人が再び歩き始める『再開』のお話。

 そんな二人に色と香りを添えてくれるのが、海に囲まれたその島の環境、レモン・蜜柑・伊予柑などの瑞々しい柑橘類、そして生み出されていく煌びやかなスイーツの数々です。
 二人を取りまく人々も皆それぞれに優しく、温かく、苦しんだり、悩んだりしながら生きていて。
 繊細かつ鮮やかな描写からそうした“生きている人の温度”に触れ、甘くも酸味の利いた柑橘の香りが思い起こされ、心も口の奥もキュゥッと引き絞られる痛みに涙がにじむ。
 私は特におばあちゃんのあのシーンがもう……っ!!(これより先はネタバレのため自粛

 甘酸っぱく爽やかで、でもどこかほんのりと苦く、読んでいると柑橘系のスイーツが食べたくなってくる。
 暑い暑いこの夏、そんなお話でスッキリしませんか?

★★★ Excellent!!!

最近よく聞くようになった「瀬戸内レモン」を題材に、大手珈琲屋の営業の涼とレモン農家で未亡人の珠里の二人の同級生を描く、ノスタルジーたっぷりの作品です。味わいのある爽やかな文体がテーマにぴったりで、鮮やかな瀬戸内の光景が目に浮かびます。
涼と珠里だけでなく、ライバルの真田社長も魅力的で読んでいて楽しいです。
沢山出てくる美味しそうなスイーツに甘酸っぱい恋模様。どうやってスイーツを売り出すかというお仕事要素もきちんとあって、ちょっと大人の女性にオススメな素敵な小説です。

★★★ Excellent!!!

仕事がきっかけで、故郷に行くことになった主人公。そこで待っていたのは、遠い昔に同じ時を過ごした同級生だった――。

といった感じで始まる本作ですが、序盤からさまざまな仕掛けがあり、島という舞台が、ある種の現実離れした雰囲気に包まれ、一気に物語に引きずり込まれます。この作品ではレモンがキーワードで登場しますが、もう一つ重要なキーワードが『同級生』だと思いました。

島を離れた二人は、長い時間別の人生を歩んでいるわけですから、再会しても当時の二人ではありません。しかし、それでも過去と現実をリンクさせていくのですが、その手法が見事で、ノスタルジー漂う世界観を作り上げられています。

メインとなる仕事についても、かなり細かい描写がされていて、異業種の方でも共感できるのではと思います。

登場人物、舞台、ストーリー、テーマ、いずれもコンテストの趣旨に合っていると思います。

素晴らしい作品と、素敵な時間を提供していただきありがとうございました。ちなみに私は、おばあちゃんがある強烈なお願いを主人公にする場面で泣けました。

文句なしで星三つとさせていただきます。みなさまも、是非一読されることを強くお勧めします!

★★★ Excellent!!!

まだ一章を読み終えたところなのですが、とにかくオススメしたくてレビュー。

舞台は瀬戸内に浮かぶとある島の果樹農家。
かつてのヒットメーカーである主人公が、それに続くヒット作品を生み出せず喘いでいたときに出会ったのは、大ヒット商品のレモンジャムを栽培していた昔の同級生。

そんな始まりの物語ですが、とてもお話の組み立て方が上手で、それだけにとどまらず、島のもつ独特の空気感や情景、人々の雰囲気や心理描写に至るまで、緻密に描き出されていて、本当に自分がその世界の真ん中に立って物語を見つめているような感覚になれます。

はじめは一人奮闘していた主人公が、いろんな人たちとの交流を通じて成長していく様子は、お仕事小説としても完成度が高いです。

ぜひ、この作品でどこか甘酸っぱい懐かしさと、息を呑むような男たちの戦いを体験してみてください!

★★★ Excellent!!!

風によって変わる、瀬戸内独特の潮は、ちょっと藍がかっていて。
照り付ける日差し。からっとした空気は、刺すような光の色でありながらどこか柔らかな色見もあって。
木々の緑のざわめき。
港の人たちの活気。
目に浮かぶ光景に、それぞれの色が鮮やかによみがえります。

ストーリーも気になるけれど、所々に出てくるレモンの白も黄色も、季節を感じる重要なエッセンス。
瀬戸内出身の私は、そう思います。

★★★ Excellent!!!

爽やかな柑橘の香りがして、香ばしい珈琲が漂って、ほんのり甘いスウィーツがあって。
大人の男と女がいて、苦くて甘くて切ない。
歳のせいかわかりませんが、何度か泣かせて頂きました。
ああ、これいい話だって、胸がざわざわしました。
もう色々ご馳走様な小説です。
うちの本棚に並んでいてほしい。
たまに思い出して読み返すから。


注:ここからは心の声
本屋勤めの妹に「先に見つけたの俺」って自慢したい!
紙に印刷された活字で読みたい!
飲食業界、特にカフェ業界のヤツ!絶対読め!リアル過ぎて泣けるぞ!
絶対ネタバレなんて書いてやるものか!
読んだ人だけが幸せになるんだ!

★★★ Excellent!!!

瀬戸内海に面したレモン畑が目に浮かぶようです。
ゆったり流れる情景に、営業、農業、人間関係が生き生きと描かれています。

中学時代の同級生と再会した主人公。
気まずさと、一緒に仕事をしようとする前向きさと、若さ故の爽やかさに、共感したくなり、うらやましくもあります。

また、ストーリーの軸となる“小道具”、レモンの存在が、作品の良い刺激となっています。
レモンのような甘酸っぱさと爽やかさを感じさせる作品、これからの季節にもぴったりではないでしょうか?
皆様も是非、ご一読を!