第2話 少年少女は今日も待ち侘びて――。
いつもなら、どんなに少ない日でも一晩で二人くらいは“客”が取れた。しかし今日は、全くと言っていいほど客がいないのだ。
誰を誘ってみても断られてしまうのだ。
――いつもは紳士然とした硬派な顔をしながらも、私が誘えば――誘わなくても、見かければ客になるのに。
もうすぐ今月の家賃の支払い日だ。それなのに全然稼げない。このままでは家を追い出されて路上生活者になってしまう。
路上生活者も嫌だが、そこから貧窮院に送り込まれるのはもっと嫌だ。
さあ、どうしようか――。マーサは困りに困ってしまった。
「――すいません……」
その時、マーサに話しかけてくる人物がいた。
「何?
――ようやく、客がきた。今月は厳しいから、少しくらい吹っ掛けてやってもいいかもしれない。マーサは密かに微笑を浮かべた。
「――そうじゃない……」
「えっ?」
客の
「ぐぁっはぁ……ごほっ……っ…………」
――なんで私なの? 同じような境遇の女なんてそこら辺に
信じられない、といった表情で客の表情を覗く。
獲物を狩った後の猛獣――口の端を歪めながら微笑む客の顔を見ながらマーサはそう思った。
それがマーサの最期だった。
∞
「マーティン、胸のリボンが少し雑だわ。これじゃ、
「えー、この結び方は
「し、知ってたわよ。それにしても結び方が汚いの。とにかくやり直しなさいよ」
「……わかったよ」
どうやら
「そういえば、ここ最近、先生帰ってこないね。どうしたのかな?」
「大丈夫よ。
「そうだけどさ――、さびしいよ」
「まあね――」
彼らには
生活自体は二人だけで何とかなった。
生活には余裕があっても、
その時、玄関のベルがチリン、チリンと鳴り響いた。
そこから現れたのは、茶色いコートに黒で揃えた帽子と靴、気の弱そうな表情をした青年――
「お帰りなさい、
「
「そうだね。二人とも上手くなったと思うよ」
「ねぇ、
「あぁ、実は
「
「それが、切り裂き魔を捕まえなくちゃいけないんだ」
「
ステイシーは軽蔑と驚愕の混じった、信じられないものを見るような眼差しを向けてきたのだ。
エリックは堪らず、マーティンに聞いた。
「マーティン、ちょっと聞いてもいいかい? どうしてステイシーは切り裂き魔について、そこまで驚いているのかい?」
それに対するマーティンの反応も似たようなものだった。
「
「隣の家のファニーおばさんも、僕たちが遠くに
「
自分が対決しなくてはならない相手が、
――隣に住むファニー夫人に日頃のお礼をしに行かなくてはならないだろうか。今までの
これからやらなくてはならないことについて考えながら、エリックの頬には薄く笑みが
女王陛下と元狂科学者の事件簿―The Queen Majesty and Frankenstein's Case File― 丹羽玲央奈 @Chapelier-Fou_Blanche-Neige
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