第5話 無敵の鎧

あらすじ

 コナードが鎧を売りつけた偉い人が怪我をしたらしい。


その一報をもたらしたのは件の騎士の人、今日は一人で来店されている。

「確かに量産品よりは軽くて動きやすい良い鎧でしたね、それで本人も思い込みからか良い調子で。」

「はぁ。」

「なんか効果を見せ付けたくなったらしくて他の兵士に『直接打ち込んで来い!』とか言い始めまして。」

「おぅ・・・」

「木の剣なので確かに鎧には傷一つ付きませんでしたね、とは言っても鉄の剣と同じ重さになるように作ってありますから衝撃が貫通したらしく。」

「・・・」

「大痣を作って寝込んでおります、骨や内臓は無事だったようで大事無いのですが大層お怒りで。ああでもおかげで戦場に行かなくて済むという気持ちと半々くらいですね。」

「あの、なんかすいません。」


話を聞いているミナミが耐え切れないように謝罪する。

「いえ、そこは公爵様・・・ナニガシのお父様がとりなして頂いて『装備に頼るな』と。同時に『戦場に行けないのであれば代わりに何らかの成果を出せ』と仰られまして。」

「なるほど、それでウチに来たと。」

「はい、先日のアレはアレでしたけど、拝見するにかなり強力な魔法の品を取り扱っているご様子。伝説の品とは言いませんので公爵様が納得される武具をお譲り頂きたく。」

「はい先日のアレはアレでしたよね!わかってます・・・コナードさん聞いてます?店長ー!?」


店の奥でごそごそしていたコナードが呼ばれてやって来る。いつものゆったりとした服の上に鎧を着けて。

「いやー、伝説級とは言わないなんて言わず、お買い上げくださいなこの伝説の鎧、その名も『無敵の鎧』!」


騎士「・・・」

ミナミ「・・・」


「うわ凄い視線が痛い、でも大丈夫、なぜなら無敵の鎧だから。」

「コナードさん、真面目な話なんですよ?」

「私はいつでも真面目ですよ、よいしょっと。」

コナードは鎧を脱ぎ、改めて鎧立てに乗せる。

「でもまあ先日のアレはアレだったので、本当に無敵であることを証明します、ちょっと二人して斬りかかってみてください。」

二人は一度顔を見合わせる。

「コナードさんがそう言うなら・・・」

騎士は自分の剣を抜き、ミナミは壁にかかっている剣の一本を取り出して構える。


「はあっ!」

気合と共に繰り出された斬撃は鎧の胴に命中!しかし鎧立てが吹っ飛ぶことも無く鎧は微動だにしない。逆に吹っ飛ばされたのは騎士とミナミの二人だった。

ミナミはそのまま両足でブレーキをかけ停止、騎士は受身を取りながら一回転し立ち上がる。


「え・・・無敵の鎧イモータル・プレート!?本当に!?」


数ある神話の中に登場する武具、そのいくつかは現存されていることが知られている。無限に水の湧き出る杯や、着けているだけで飢える事が無くなる指輪など。だがその全ては例外なく国宝として奉られている。

昔とある勇者が竜に挑んだ際、その火の息を全て竜に跳ね返した、という伝説に登場するのが無敵の鎧イモータル・プレートである。


「本当に・・・これをお譲り頂いても!?」

「もちろん。伝説の中にある鎧であることは証明できませんが、ご覧の通りの性能であることは保証します。」


そうして騎士は再び鎧の入った箱を背負い、興奮した様子で帰っていった。


「・・・コナード店長、あの鎧って・・・」

「先程言ったことが全てですよ、何も嘘はありません。」

「いえ、そうでなく何か落とし穴があるんじゃないですか?自分が持つ剣も弾き飛ばしちゃうとか1日1回しか使えないとか着る人の寿命で動くとか」

「ミナミさんは私を何だと思ってるんですか。本当にリスクもデメリットも無いですよ。」

「それはそれで・・・そんな強力なものがこれから戦争するって国に渡るのは心配ですね・・・」

「なかなか鋭いですねぇ、それは次回をお楽しみということで。」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る