もはや「ツンデレ」という言葉の定義自体があやふやになった昨今ではあるが、仮に「か、勘違いしないでよね! 別にあなたのためにしたわけじゃないんだから!!」系のツンデレを例に取り上げると、こんなヒロインは鈍感主人公にとっては恐怖以外の何物でもない。何かあるとすーぐ暴言絶対吐くマシーンと化し、その姿はヒステリーそのもの。
しかし、では何故そんなツンデレヒロインが一時期一世を風靡したのかというと、何もそういったヒロインの出てくる作品は必ずしも主人公に感情移入させることを目的としてはいないからである。物語を俯瞰する、半ば神のような視点を持つ読者は「あーこのヒロインはまあ毎度主人公を影から支えているのにいざ本人を前にすると恥ずかしがっちゃって〜、カワイイ♡」といった感じに物語を楽しむのである。
なんの話だっけ?
つまり、今小説「あまのじゃく」は、そういった主人公たちの心情やこの先の展開を、タイトルや地の文の機微から読者たちが推測することによって「こいつら素直じゃねーなー笑」と、ニヤニヤしながら読むための小説といえる。
文章はとても重層的で、かつ読み進める中でスーッと内容が頭に入ってくる。詰まることの少ない流れるような筆さばきと、なんとも深い思索を思わせる肉厚ステーキのような畳み掛ける地の文は、なるほど文章の硬さと柔らかさが見事に溶け合っている。
水着姿や浴衣姿に代表されるヒロインの外見描写は鮮やか。近頃恋をした経験がおありとお見受けする。