桃太郎は正義か。

魔界と人間界の行き来は長く封印されてきました。
千年振りに鬼の精鋭部隊が人間界へ進軍してくるところから、物語は始まります。

そこは遠い過去に「桃太郎」とその家来に、多くの鬼が殺戮された忌まわしい伝説の残る鬼ヶ島でした。
若い鬼たちは、誰も見たことの無い「人間」に怯えつつも、勇気を奮って任務を果たそうとします。

近未来SFテイストのダークファンタジーですが、戦場の青春を描いた映画を観ているようでした。

任務にいそしむ若き兵士の鬼たちの姿が、ごく普通の若者の青春群像としてユーモラスに描かれますが、得体の知れない敵と遭遇する緊迫感溢れるシーンの恐怖感とのギャップに飲まれます。

登場キャラクターがほとんど鬼という異様な世界を、丁寧に構築していく描写が素晴らしかったです。

お互いの実像を知らない鬼と人間が、共存の可能性を探ろうともせずに悲惨な戦争を繰り返す現代の世界情勢そのもののようでした。

このラストの切なさは、忘れられないと思います。

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