人生相談って難しい (その後の出来事)
(キ~ンコ~ンカ~ン)
最終チャイムが学級委員に号令をかけさせた。
先生は一言、「ありがとうございました」と礼儀正しく言い立ち去っていく。
さぁて、清掃の時間が始まった!と思ったら今日は清掃はないらしい。
何ともむなしく感じるものだが、早く帰れるのであればそれでいいだろう。
俺は返りの学活を聞き流し、学級委員の号令に合わせてさようならを口にした。
左扇はいくらか低い声で「はい、さようなら」と返事を返す。
それをしっかりと聞いた俺は教室を後にした。
斜めがけの鞄を振り回しながらあかりの乏しい廊下を歩く。
ふと、背中に暖かい手の感覚がやってきた。
「やぁ!」
慌てて振り向いてみれば壁新聞部部長、斎藤がたっていた。
妙な笑みを浮かべあかぶち眼鏡を輝かせている。
「おっ、おう。なんかあったのか?」
すると、斎藤は驚いたような表情を見せた。
「本当に何も気にしないんだね。君は」
まぁな。
内心でつぶやいた。
本当に気にしてなんかいない。
俺はそういう人間なんだ。
「本当はわかってるんでしょ?みんなの君に対する好感度はまさしく氷点下だよ」
そこに浮かべられる笑みはきっと苦笑いなのだろう。
俺も負けじと苦笑いを浮かべる。
「まぁ、気づいてはいたけどな。俺にとって重要なことじゃなかったから気になんかしてない」
「へぇ~、友達をみんな失って重要なことじゃないんだ」
そう、俺はすべてを失った。今までなぜかついてきた友達を・・・。
「まぁな。俺は人間が嫌いなんだ。誰かを見るたびに相手が何を考えているのか考えてしまうし、正直友達だってどうだっていいと思ってる」
俺の表情は知らないうちに無へと変化していた。
「なぁ、お前はあの新聞に俺から聞いた話だとは一切書いてないんだろ」
ささやかな問いに斎藤は大きくうなずく。
「だったら、そこに信ぴょう性なんてものは何一つない。それでも奴らは信じた。そして、俺に勝手なレッテルを張り付け遠ざけた。つまり・・・」
しばらくあいた間に斎藤と目があった。
「俺を囲んでいた友情なんてそんなもんだったってことだろ」
悔しくともなんともない。
そう自分に言い聞かせ目を見開く斎藤に回答を任せた。
「本当にひねくれてるね。そんなんじゃ、誰も助けてくれないよ」
「知ってる」
俺は即答した。そして、話を追加する。
「それに、俺はきっと・・・助けてくれた人のことさえも信用できないだろうしな」
何を思ったのか斎藤は表情を曇らせた。
「君、昔何かあったりした?」
どうやらまじめに聞いてきているらしい。
「そんなもんねぇよ。俺は昔からこういう性格なんだ」
「ふ~ん。幼稚だね」
そんな言葉を最後に彼女は手を振って去っていった。
このあと部活があるらしい。
幼稚・・・か。好きにいえ。
少なくとも俺は俺を幼稚だとは思わない。
それだけで十分じゃないか。
共感できる相手なんて必要ない。
俺は俺でしかないんだから・・・。
ブツブツとつぶやきながら昇降口を抜け、門を出た。
吹き荒れる風がやけにうるさく感じる。
観が寝てみれば人りでこの門をくぐったのはこれが初めてだ。
きっと、周りに音がないからここまでよく澄んだ音が聞こえるのだろう。
「待ってください。山木さん」
背後から俺を呼ぶ声がする。
ゆっくりと振り向いた視線には苧島が写りこんでいた。
「お前、誰かと一緒に帰らなくてもいいのか?」
「さぁ、どうでしょうね。そんなことより、早く帰りましょ」
鮮やかな笑顔だ。
彼女は優しいから俺に気を使ってあの件に関する話題を避けているのだろう。
しかし、その表情はひどく爽やかに、晴れているものだった。
俺はたったの一日でボッチへとなり下がりました 初心者@暇人@ @000005
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