人生相談って難しい (地位的転落)

いや~、短い休み時間の間によくやった。


自画自賛するのはたまにはいいことだ。


うん、自らの自信につながるからな。


自画自賛をさらに自分でフォローしながら俺は号令を口にした。三時間目も四時間目の授業もなぜか自習が続いた。


出された課題プリントは提出しなくてもよいようなので誰一人として手を付けていない。


俺ももちろんそのうちの一人だった。


ということは、斎藤はこの時間のうちに壁新聞を作っているのだろう。


多少の期待?を抱えながら俺は手元の本に視線を落とした。




「ご~ち~そ~さ~ま~で~し~たぁ~」



おいおい、小学生か!。


そう突っ込んでやりたいくらいのものだった。


このクラスの精神年齢は小学生並みらしい。


今日何度目かわからないため息を吐いた。


そして、椅子を引いて立ち上がる。


俺は真っ先に廊下へと向かった。


すでにチャイムが鳴ってからしばらくたっていた。


それが理由か廊下にはすでに群れのように人がしゃべくりあっていた。


しかし、何やらいつもよりも視線が痛い。


それに、いつもよりも俺に対する声が少ないのだ。


というより、一度も声をかけられていない。


まぁ、最初からうるさいと思っていたほどなのだからちょうどいいことにはちょうどいいのだが・・・。


これはおかしいと校内を見回ってみることにした。


そして、理由はすぐにわかった。


壁新聞部の仕業である。


仕業というよりおかげというのが正しいのだろう。


階段を下るごとにはられた壁新聞。


そこには俺の写真が5枚ほどにわたってつづられた長文がびっしりと並んでいた。



「マジかよ!」「うわ~、山木最悪」「私、山木は怪しいと思ってたのよ」



などと、壁新聞の周りからはたくさんの言葉が飛んできていた。


後ろに本人居るんですけど・・・。


まぁ、今、この瞬間に俺はスクールカースト的なものの中で最底辺に落ちていったのだろう。


そして、キモイ、というレッテルが張られ始めているはずだ。


何とも厳しい現実である。


教室への帰り道、俺は無数の生徒にスポットライトを当てられていた。


なんとか教室までたどり着くと、がらっがらの教室で再び本を開く。


担任の左扇が妙な目でにらみつけてくるのが分かった。


小学校から合わせて、自分一人になったのはこれが初めてなのではないだろうか。


後ろにも、前にも、右にも、左にも、人が誰もいない。


そんな空間はなかなかに気分がいいものだった。


責任が何もなくて最高だ。一人だからこそ、好きな読書ができる。


一人だからこそ、静かな空間で読書できる。


メリット読書ばっかりじゃねぇか・・・。


しかし、この俺は物欲もなければ食欲もない。


当然、したいことなどのよくもないわけで・・・。


つまり、読書以外することがないということだ。


となると「友達」というのもなかなかいい暇つぶしの道具になっていたのだろう。


そのせいで貴重な読書時間が無くなっていたというのもないわけではないのだが。


俺は窓から吹いた風にまかせてページをめくった。


何気なく真横の流しを見てみれば水が出っぱなしになっているじゃないか。


いつもなら止めに行くところだがその日、俺は流れていく水がきれいだと感じた。


そして、机に頬杖をついてそれを眺め続ける。



「はぁ~」



いつの間にかまた、ため息をついていた。 

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