こんな楽しい職場なら、ぼくも諜報員になるんだった!

 昭和初期を舞台にしたスパイ小説、というわけでもない。主人公の仕事がスパイなだけ、かな?

 本来陰湿な裏切りものであるスパイのイメージを一新したのは、ジェームス・ボンドのシリーズだが、本作の主人公はジェームス・ボンドのように魅力的だが、女が苦手というスパイ小説ではあり得ない設定。
 ここですでに破綻している。

 そこへもってきて、同じ職場の同僚たちの個性的なこと。おまえら、スパイの意味理解しているのか!と、腹を抱えて笑ってしまう。


 出てくる事件も、のっけからお嬢様の運転手けん執事。「お帰りなさい、お嬢様」的な。

 次の話は推理物なのだが……。


 時代考証がしっかりしていて(いやしっかりしているかどうかは検証してないのだが、しっかりしている感じがする)、随所にそれらしい言い回しや単語が散りばめられ、昭和感を醸し出している。


 文章は異様に読みやすく、誤字脱字の類が皆無にちかい(あるかもしれないけど)。


 さらに、あちこちに作者が答えをあたえずに仕込んだ細かい謎や遊びが満載。


 1話だけ読むつもりが、一気に4話までいってしまった。

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