002―インタビュウレポート

████/ ██/██、アガイノミャコ██区████の地下区域にて事前調査で判明している地点に調査員が対象M(以下M)を見つける。

調査員の一人(以下R):こんにちは〜。すみません、ちょっといいですか。

M:(無反応、ホームレス風の中年男性の姿)

R:████さんで、お間違いありませんか?

M:(数秒の沈黙)ああ。

R:唐突で申し訳ないのですが、私どもは、倫理促成団体の者ですが、ご存知ありませんか。

M:知らねえ。(ほんの少しの沈黙のあと)いや、俺は知らねえ。けど儂は知っている。

R:ご存知ならば話は早い。我々と共に同行して頂きたいのですが。

M:ご存知ならば話は早い。我々と共に同行して頂きたいのですが。(Rの発言を復唱している間に、Rの姿へと変身する)

R:!

M:どうですか。(Rの姿、声と服装で)

R:素晴らしいですね。ご同行願えますか。

M:(少しの沈黙と共に)それは、見返りによりますね。それから、私の安全係数にも。(その後元のホームレス風の格好に戻っていく)

R:ご心配なく。

  ・

  ・

  ・



████/ ██/██、██████地下二階、面談室。

B博士と対象Mの会話(以下B、M)。

B:こんにちは、████さん。

M:(沈黙、ホームレス風の中年男性の姿)

B:単刀直入だが、お前はお前の変身能力のために、ここに招かれた。知っているだろうが。

M:(躊躇う)あぁ。

B:あー、言い忘れていたことがある。最初にうちの職員と接触した際に、お前は彼に変身してみせたようだが、今この空間でそれをやると、やった瞬間に左右上下からの機関銃の被弾及び、私を巻き込んでの毒ガス処理ならびに、この一角自体の爆破まで用意されているから、気をつけてくれよ。

M:(あたりを見回してから)ちっ。そんなとこだったのかよ、ここ。(思案して)まぁ、そっか。そうだったわ。

B:ん? そうだったとは?

M:なんでもねぇよ。けどよ、なんで俺の変身を、そうやってさせねーんだ?

B:(数秒の沈黙)お前の変身能力についてなんら情報がないんだ。職員に変身して見せたことの一つくらいしかね。だから、たとえばほら、ドラゴンにでも変身して暴れられたら困るってことだよ。

M:バケモン扱いかよ。

B:そうせざるを得ないだろう。

M:で、何だよ。どうぞ、言えよ。俺は見ての通りホームレスだ、時間なら有り余ってるさ。金をくれるなら話くらいいくらでもしてやるよ。

B:冗談を。いくつか質問させてもらうだけだよ。では一つ目。その姿はお前自身ですか?

M:(一瞬思案して)そうだ。

B:そう。二つ目。何にでも変身できますか、ないしは、例えば人間にしか変身できないなど、制限はありますか。

M:(間を置いて)ねえけど、やらねー。めんどいから。

B:なるほど。じゃあ三つ目。年齢はお幾つですか。

M:見ての通りだ。中年だよ。

B:四つ目。自分の能力については、いつ頃から自覚がありましたか。

M:憶えてねえ。

B:ふむ。五つ目――

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  ・

  ・

B:なるほど。不明な点だらけだ。

M:個人情報の保護がなんとかって言われてんだろ?

B:それは人間の理屈だよ。

M:人間だし。

B:化物だよ。

M:(沈黙)けっ。まーいー。これで終わりか?

B:いやいやそんな、重ねるな。冗談が過ぎる。これから別の研究施設に輸送されるんだよ。

M:おい話が違うじゃねーかよ。質問だけっつっただろ。それに輸送とか、まるで猛獣か何か俺は。

B:あぁ、「ここでは」って付け足さなかったか。悪い悪い。それにお前は我々にとってはそんな感じだからね。きちんと監視付きで。あと、今とさほど変わらない状況のままだから、まだ変身はしないでもらうよ。

M:(思案して)まだ?

B:気にするな。しかしお前、お前と話していてさっきからずっと思っているけれど、よく素直に職員に連れて来られたよね。素直に来そうにはないキャラに見えるが。

M:(数秒の沈黙)それはまぁ、なんだ。気まぐれだ。ホームレスの暇つぶし。子ちとら生活に困ってんだ、見返りくれるっつってたから。

B:へえ。まあいいか。じゃ、あと数分後に移動だから、それまでは雑談でもしていよう。

M:悪いが断る。記録されているようだし、迂闊に話したくない。気分的に。

B:つれないな。(間を置いて)もう一ついいか。変身能力があれば、職なんて簡単に手に入れられそうだが、違うのか?

B:(沈黙)そんな上手くいかねーよ。

M:そうか。

(この後両者一言も話さず記録時間終了)

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