ふるさとと帰りたい場所

平松藤瀬

夕方と思慕

20x x年。秋のある日。

近鉄尼ヶ辻駅を降りて、県立奈良病院の方に向かって歩く。


奈良に生活の場を移し、一人暮らしを始めていた私。


専門学校に通い、それなりの生活をしている。

今日は、親から振り込まれた仕送りを引き出し日用品や食品を買い出した。

自炊が上手くいかないため、冷凍食品や野菜を足せば作れる料理の素が救いだ。

不摂生はするなと言われているが、無理だ。

勉強もしなきゃいけない。

あとは、遊びたい。


歩いていくと、二つに別れた道。

そこを左に入る。

右だと交通量が多いわりに、道が狭いため歩きづらくなるため交通量の少ない左の道をよく使う。


住宅が建ち並ぶ。

夕刻の今は、食事の支度をしているのかあちこちからいい匂いがしてくる。

味噌汁、焼き魚、煮物。

お邪魔したい。

羨ましい。


そして、私がこの左の道を歩く理由の一つが古墳の存在だ。

しかし、誰の古墳かわからない。

専門学校を卒業してからもわからない。

周りをぐるりと、池に囲まれ近づけない。

余計、古墳から遠退く感じだが歴史を感じられるものが身近にある。


それが奈良県。


夕刻を示すように、そらが少しずつ暗くなる。

青と藍と赤の混ざった空。

そこに静かな住宅街。

自分の育った町にはない景色。


専門学校に通いながらも、子供の頃からの夢を諦めきれない私の魂が残る。


奈良県奈良市平松という場所。


平松藤瀬というペンネームで何かしたいという私が生まれ、夢を追う私がいた場所。


奈良市は私のもう一つのふるさと。

帰りたいばしょ。


もし、自分がインタビューを受けるなら


「奈良県奈良市は私の第2のふるさとです」


そう答えたい。

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ふるさとと帰りたい場所 平松藤瀬 @haruka08

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