第7話 後日

「じゃ、お世話になりました。ドラゴンが倒せたらご報告しますね」

 燃崎カルトはそんな挨拶一つで、ひょうひょうと去って行った。

 だが河右衛門には分かる気がした。彼にとって大冒険であったあの出来事も、あの少年の長い旅路の中ではただの1エピソードに過ぎないのだろう。それ以来、カルトからの連絡は来ていない。ドラゴンを倒すにはまだ至っていないらしい。

 だが河右衛門は心配していない。

 先日の新年会で、仲間とこんな話をしたばかりなのだ。

「なんでぇ、河右衛門。じゃあ、お前さんが大鬼と相撲をとって河中湖から追っ払ったって噂は、まるっきりただのデマかっぱ?」

「そうだカパ。オイラはそんなことしてないカパ」

「なんでぇ、なんでぇっ。相撲を見たってヤツもいるし、木やら石像やらそれこそ阿修羅が暴れた後みてぇに壊れてたって聞いたから、今日は武勇伝聞こうと思って来たのにガッカリかっぱ」

 噂好きの川吾郎が、がっくりと甲羅を落とす。

「まあ、噂なんて大抵が嘘っぱちカパ」

「そうだよなぁ……今どきそんな話そうそうあるわけねえかっぱ……。となると、あの噂だって真相はどうか怪しいもんだかっぱ」

「あの噂ってなにカパ?」

「いや、すげえんだ。ついこの間の大晦日だってハナシかっぱ。なんでもどこの馬の骨とも分からん人間が、飛騨の天狗の里に乗り込んだって噂かっぱ。なんでもソイツは飛騨の大天狗と立ち会いたいと頼み込み、とうとう大晦日の大一番で大天狗とガチンコの柔術勝負したってハナシかっぱ。信じられるか? いまどき源義経だってそんな無茶しねえかっぱ」

「ほおー、で、どっちが勝ったカパ?」

「馬鹿かてめえはっ。天狗の勝ちに決まってるかっぱ。飛騨の大天狗と言えば大妖怪も大妖怪! 人間如きが敵うわけないかっぱ」

「ふむ。まあ、そうかもしれんカパ」

 河右衛門はグビリと新年の酒を飲むと、こう言ったのだった。


「でも次はきっと、少年の方が勝つカパ」

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意識高い系バーサーカー 燃崎カルトの冒険 白木レン @blackmokuren

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