第6話
結局茉莉那はその日、結城からタクシー代すら貰うことができず帰宅した。
リバースを出る直前に「援交はやめるように」と言った結城の声が耳に残っていた。学校はバイト禁止、だからやめて生活費を稼ぐ術は無い。
「茉莉、おかえり」
「
「いや、
茉莉那が家に入ると、待っていたのはソファーに倒れる少年だった。
少年、
茉莉那は面倒くさかったが、聞かないと自分の話を出来ないと思い強引にソファーに座りこむと話を聞く姿勢をとった。
「今日、藍香ちゃんに呼び出されたわけよ。そしたらまず妊娠の証明書みたいなの出されてさ、謝られた。ま、気付いてたけど相手俺じゃなくて同僚だって。慰謝料代わりって金ならせしめたから良いけどさぁ」俺は妊娠させるなんてヘマしない、と苦笑しながら一晴。
「いくら? 藍香って商社勤めだったよね?」と、現金な笑みを浮かべた茉莉那。
「15万。泣いてみせたらすぐよ」
15万入っているという封筒を机に投げるように置くと、一晴は茉莉那になんで今日早いの?と問いかけた。
茉莉那は一瞬言葉に詰まったが、双子の兄なら大丈夫だろうと思いリバースでの出来事を話した。
「今日の客が、同級生で、軽音のバンドメンバーだった。性格くそ悪いし口外禁止言うし、挙げ句の果てに援交禁止とか言いやがる。クソだわ」
「うわ、マジクソじゃん。てかそいつと俺どっちが性格悪い?」
「良い勝負かも、でもあいつまだちゃんと知らないからわかんねぇ」
茉莉那が良い勝負、と言うと一晴は声を押し殺すように笑った。リバースで見せた結城の卑劣な笑みにそっくりな笑い方だ。
それを見て呆れたように笑うと茉莉那はとりあえず明日学校あるし、と言うと自室に戻って携帯電話を開いた。
センターにアクセスすると新着メールは3件。どれも学校関係だった。
『軽音楽部の、ドラムの富士見です、雅樹からアドレス貰った。登録頼む』
『弓月だよん☆』
『ああ、そういえば今日のこととか詳細口外禁止と証拠隠滅頼むわ(^○^)/』
富士見、それから弓月のアドレスは登録し、茉莉那は柄に合わず顔文字付きの結城からのメールをどうするか迷い、一瞬体が硬直した。
が、とりあえず返信はしておこうと思い返信画面を開く。無題にRe:が付いて目障りだ。
『了解。メールの過去ログは消しとく』
双子の兄の話はすると面倒になると思い、およそ5分間迷った末シンプルな内容で送信した。
そしてやや濃い1日に疲れたかの様に茉莉那はベットに倒れ込み、眠りについた。セーラー服のままシャワーも浴びずに。
始まりの魔法 霧槻 柊 @928367
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