運命づけられた青春ライン上の情/理

本作は事故をきっかけに前世の記憶を思い出した少女・鳴瀬琴葉を主人公とする青春ミステリーです。

主題となるのは、前世の琴葉が付き合っていた『シロちゃん』の生まれ変わりは誰なのかという謎で、四人まで候補者を絞り込むところの道筋は多少強引にも感じましたが、そこから謎の解明に至るまでの道筋はたいへん美しく、意外性を持たせつつしっかり納得できる地点に着地しているように感じられました。

輪廻転生という特殊設定を用いたミステリでありながら、読者が琴葉とともに「誰がシロちゃんの生まれ変わりなんだろう」と考えながら読んでいっても楽しめる作品だというのは、この作品の大きな魅力であると思います。

真相(運命)が明らかになった後に訪れる結末も印象的。青春ミステリーらしく、鳴瀬琴葉自身の事件にふさわしい素敵な結末だと感じました。

総じて面白く、例えば北村薫や辻村深月が好きな方に勧めてみたいとも思いましたが、それこそ北村薫や辻村深月の小説でしばしば出会う「はっと目が覚めるような清冽な一文」に巡り会えなかった点だけは残念。リーダビリティーそのものは高いので、ワガママな要求ではありますが、これからさらに描写力を磨き上げれば、もっと蒼山ワールドを堪能できるのではないでしょうか。

ともあれ素晴らしい作品をありがとうございました。
次の長篇が公開される日を楽しみにしております。

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