高校生の鳴瀬琴葉は、ある日偶然に前世の記憶を見てしまいます。
その記憶は自分が事故に遭って死ぬ寸前のもので、しかも自分だけではなく、恋人も死にかけていていました。死にかけた恋人の言葉によれば、二人は十五年に今琴葉が通っている高校で再会するということでした。
この記憶を見てしまった琴葉は、彼と再会するためオカルト研究同好会会長に協力してもらいます。
犯人を捜したり、宝物を捜したり、迷い猫を捜したりと、謎を解決するために色んなものを捜すのがミステリーというジャンルですが、本作で捜すのは前世の恋人。
こう設定が目新しいと奇を衒っただけの作品に思われるかもしれませんが、本作の場合そんな懸念は無用です。
終盤で書かれるどんでん返しの連続はびっくりすることまちがいなし!
しっかり満足のいくミステリーに仕上がっています。
また真実に近づくにつれて、前世の自分と今の自分、どちらの気持ちを優先するのかという琴葉の葛藤も描かれ、ただのミステリーに終わらずラブストーリーとしても読みごたえ充分!
(必読!カクヨムで見つけたおすすめ5作品/文=柿崎 憲)
本作は事故をきっかけに前世の記憶を思い出した少女・鳴瀬琴葉を主人公とする青春ミステリーです。
主題となるのは、前世の琴葉が付き合っていた『シロちゃん』の生まれ変わりは誰なのかという謎で、四人まで候補者を絞り込むところの道筋は多少強引にも感じましたが、そこから謎の解明に至るまでの道筋はたいへん美しく、意外性を持たせつつしっかり納得できる地点に着地しているように感じられました。
輪廻転生という特殊設定を用いたミステリでありながら、読者が琴葉とともに「誰がシロちゃんの生まれ変わりなんだろう」と考えながら読んでいっても楽しめる作品だというのは、この作品の大きな魅力であると思います。
真相(運命)が明らかになった後に訪れる結末も印象的。青春ミステリーらしく、鳴瀬琴葉自身の事件にふさわしい素敵な結末だと感じました。
総じて面白く、例えば北村薫や辻村深月が好きな方に勧めてみたいとも思いましたが、それこそ北村薫や辻村深月の小説でしばしば出会う「はっと目が覚めるような清冽な一文」に巡り会えなかった点だけは残念。リーダビリティーそのものは高いので、ワガママな要求ではありますが、これからさらに描写力を磨き上げれば、もっと蒼山ワールドを堪能できるのではないでしょうか。
ともあれ素晴らしい作品をありがとうございました。
次の長篇が公開される日を楽しみにしております。
オカルティックな青春ミステリーもの。
近年異世界に転生する作品が多いですが、この作品はちゃんと(?)現代に転生してます。そして前世の曖昧な記憶を頼りに転生前の想い人を探す展開はまさにミステリー特有のもの。伏線がしっかりしており、後半の種明かしでの伏線回収は小気味いいと感じてしまうほど素晴らしいものでした。
また構成と文章が綺麗で、スルスルと読み進められるところもこの作品の魅力の一つかと思います。ストレスフリー過ぎて「あれ? もう終わり?」と思ってしまうほどで、10万字の文字数をいい意味で感じさせない作品でした。
ミステリーはあまり読まないのですが、この作品は久々に夢中になったミステリー作品でした。気になる方は是非読んでみてください! 面白かったです。ごちそうさまでした!
……ネタバレになるためあまり詳しくは言えませんが、クライマックスで「そっちかー」と思ってしまいました。今の物語も素晴らしいですが、個人的にはもう一方のエンディングも読んでみたかったですね。
普段ミステリー小説はほとんど読まない私でも楽しめました。
本作は冒頭からはっきりと謎が提起されており、それに対する推論やヒントもわかりやすく提示されていきます。
そのおかげで、【推理】をするという態勢になっていない私の脳細胞でも無理なく活性化し、登場人物と共に謎を追う姿勢が自然と構築されていきます。この辺りの手法はとても見事かつ読者に優しいもので、普段ミステリーを読まない方や、それこそ小学校高学年、中学年くらいでも楽しめるのではないかと思うほどでした。
後半の解決編も素晴らしく、ただ謎が解明されるだけではない、その先の決断を描き切れていてとても好感の持てるラストでした。
しようと思えばよりウェットな方向に持って行くことも可能だったかと思いますが、あえてそうせず、まさに風のような読後感へと帰結させたのもお見事です。あらゆる人にお勧めできる、大変素敵な物語でした。
主人公の少女は、唐突に前世の記憶が蘇る。彼女は中学生時代、付き合っていた彼「シロちゃん」がいたのだが、バス事故に巻き込まれて死別してしまう。しかし「15年後に出会う」というシロちゃんの予言じみた言葉を胸に、少女はオカルト研究同好会の少年に打ち明け、一緒に「シロちゃん」を探し始めると、候補は四人いて――
すっかりと騙されました。ミステリの醍醐味、どんでん返しに思わずリルで「おお……」と口ずさんでしまいました。
ありとあらゆる部分がミステリで、先入観に騙されるときっと真実は見えてきません。
ですが、読了感は半端なくよく、ミステリの楽しさ、ならびに青春グラフィティに恋愛と、ありとあらゆるエンタメ性が詰まっております。
また文章も非常にうまく、まさに「読ませる」小説であると私は感じました。文章に引き込まれ、思わず時間を忘れて読んでしまう程です。
貴方も誰が「シロちゃん」か、推理しながら読んでみてはいかがでしょうか?
おススメです
さすが高評価の作品だけあってとても面白いです。
前世の記憶を持った少女が、その記憶を辿りながら運命の赤い糸を紐解いていく、新感覚ミステリー。
輪廻転生という、ミステリーらしからぬ非科学的要素をテーマとして孕みながらも、その中で定められた法則に従って、謎を解明していきます。
一見、何でもなさそうなところに伏線がびっちり敷き詰められており、真相パートでは、「あ、そうだったんだ」と心の中で納得。
しかし納得したところでまさかのどんでん返し、と読者の予想を良い意味で裏切って、最後まで飽きさせません。
ミステリーとしてもレベルが高いと思います。
ストーリー展開のスピードも適度で、文章は非常に読みやすく、10万字という長さをまったく感じさせません。エピローグまで楽しめました。
最後はとても温かい気持ちにさせてくれ、良い読後感を味わうことができました。
高い評価の作品は、やはり面白いんだな、と改めて実感させてくれました★
このような作品をお書きになられる、アオヤマ氏の文章力、構成力を羨ましく思うほどです!
ある日甦った前世の記憶をもとに運命相手を探し始めるヒロイン琴葉。
それをサポートするのはなんと、オカルト研究同好会というなんとも怪しげなものに所属する弓槻くん。
謎解きの面白さと、単なる前世の記憶に過ぎなかった恋がどんどん明確なものになっていく。先が気になって気になって仕方がない。
琴葉の明るい積極さとそれを支える弓槻くんのミステリアスな魅力と聡明さが話を更に面白くする。
運命について。
生まれ変わり、前世の定義。
これらは新しい解釈でしたが、ストーリーを追う上でとても心惹かれるエッセンスでした。
なんの不快感もなく最後まで読めたのは、魅力的な登場人物に加えて、文章力と構成の良さなのでしょう。
予想を何度も何度も裏切られて、終わりまで辿り着いたとき。
顔が綻び、目の前が少し滲みました。
爽やかな温かい風が吹いたような読後感。
最高でした!
主人公の風呼ちゃんがオカルト研究会の弓槻くんと前世の恋人が誰なのか推理する青春ミステリー。
ミステリーなんだけど、殺人事件とかじゃなく日常の謎を解き明かす形式の作品で、人が死ぬのが苦手な方でも楽しめます。
一人ひとりのキャラクターが魅力的で、特に弓槻くんが好きです。文章もやさしい語り口で読みやすく、グイグイと引き込まれ、読み終わった後ほっこりとするお話です。
すごく気軽に読めるのですが、謎の部分や構成、キャラクター造形などはしっかりと作り込まれており、作者の力量を感じました。
前世の恋人の正体については、私はすっかり騙されてしまいましたが、もし仮に推理を当てられたとしても、ドラマパートがとても面白いので楽しめたと思います。
ミステリーとしても恋愛ドラマとしても上質で、何度も読み返したくなる作品です。
書籍化したら絶対に買います。それで、将来子供ができたら「マンガばっかり読んでないでこれでも読みなさい!」って勧めたいです。
主人公の鳴瀬琴葉は、ある日突然――前世の記憶が蘇る。
それは月守風呼という少女の、死ぬ間際の記憶だった。風呼は死ぬ間際に、恋人のシロちゃんと「生まれ変わって出会い直そう」と約束しており、琴葉はその記憶を頼りに自分の運命の相手を探し始める。
恋愛ものでもあり、ミステリーでもある一風変わった本作。探偵役にオカルト研の弓槻架流を置き、琴葉はその助手として校内を駆け巡るのだが――この運命の相手探しが、かなり面白い!
弓規君は以前から生まれ変わりのことを調べており、独自のルールで運命の相手候補を四人に絞り、一人一人にアプローチをかける。後半になるにつれて謎が謎を呼ぶ展開が続く。そして、ミステリーのお約束であるどんでん返しにもあるのだが、そこは本編を読んでのお楽しみ。
正直、僕の予想は見事に全部外れたので、みなさんも是非琴葉と運命の相手探しをしてもらいたいと思う。
※ 人によっては、生まれ変わりついて独自のルールの理論がうまく呑みこめず、説得力に欠けると思う人もいるかもしれな。しかし、そこはそういうものだと理解してどんどん先に読み進めてほしい。しっかりと納得できる解答が用意されているので安心あれ。
ある日蘇った記憶を元に始まる前世の運命の人探し。
だけど手がかりはほんの僅かで――。
ミステリーというと私はあまり食指が動かない方なのですが、この作品は青春恋愛ものとして、最後までワクワク楽しめました。
話が進むごとに、「いやぁこれ違うだろうなぁ」とか「あれ? もしかして?」とか、おそらく作者さんの思惑通りに予想を左右させられてしまったのですが、謎が少しずつ明かされるごとに「まさかあの人か……!?」という高揚感を主人公と一緒に味わえた気がします。
特にクライマックスではドキドキさせられました。
むふふ……やっぱりそうだったのですね(ニヤリ)
高校生らしい青臭さもあって、ニヤニヤ悶えることもあったり……。
とにかく恋愛もの好きには美味しい作品でした。