どこまでも黒い感情たちが交錯する。

三人の主人公の、それぞれの視点から物語が語られます。
別々の人生を歩む三人は、別々にある力を授けられることになります。
口にしたことが真実になる力、言霊。
言霊とそれを授けられた三人、そしてそれを授けた呪神という存在たち。それらが様々な黒い感情をかき混ぜていきます。

最初、口に出すだけで真実になる力、という言ってしまえば何でもありの能力を使うというところで、物語がぐちゃぐちゃにならないか? と心配していました。
確かに力の所有者はむちゃくちゃなことをします。しかしその行動、展開は、その人物の黒い感情と合っていて、説得力がありました。読みごたえのあるものになっていました。

登場人物の性格が黒く歪んでいて、とても魅力的です。
私が特に好きなのは、水無月 ルキアです。
快楽殺人者であり、殺した女性の死体は愛を注ぐため保管している。はっきり言ってまともじゃない人です。
そしてもうひとつ、呪神の女の子も愛していて、その想いをどんどん強くしていきます。そこもまた歪んでいて素敵でした。
黒くて歪んでいる、強い愛情が好きな方にお勧めしたいキャラです。

正直ブラックなお話が苦手な方にはお勧めできません。登場人物のすべてが黒い感情を持っています。その毒がとても強いのです。
しかしブラックなお話が好きな方には強くお勧めしたいです。
最後まで読んでみてください。最後まで――いや、最後が一番真っ黒です。

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