竜と天使の中世風ファンタジー
(旧題「カルテット」より改題しました。2022/03/03)
雷鳴の轟くトルレッキオ学院に、天使は降り立った。
千年に渡る四部族の戦いを終わらせるために。
しかし儚い同盟は、すぐにも破られるかに思われた。
停戦の人質として差し出された少年たちは、学院で天使と出会う。
「私の名はシュレー・ライラルだ。もう天使ではない」
果てしない戦いの中で、憎むことしか学ばなかった。
「四部族の和平のために、永遠の友情を誓ってほしい」
少年たちは天使から、小さな同盟を求められる。
「憎しみは捨ててくれ。君のその傷ついた心も全て」
殺し合う運命だったはずの君が、隣で歌を歌ってくれる。
「私はこの世界を終わらせるために来た、予言された滅びの子なんだ」
天使はきっと、世界を壊す。君と手を繋げない、悲しいこの世界を消して。
「秘密だよ。私の秘密を話したんだ。君のも話していけ」
秘密だよ。みんなと出会えて良かった。たとえ死ぬのが今日だったとしても。
僕らはもう、君に祈らない。共に歩いていく。
「友よ、君たちと過ごした僅かの時だけが、私の生涯の光だった」
あの孤独な天使の、心を知ってる。本当の笑顔を見た。
君も僕たちと同じ、泣いたり笑ったりする。
たった十三歳の子供のように。
それが少年たちの守る秘密。天使がいつも隣にいた。
過ぎ去りし少年の日々の、友情の物語。
(小説サイトTEAR DROP.で公開していた原稿の再掲です)