プロ野球、身体検査、しめ飾り
おじいちゃんの家では、いつもプロ野球の実況ラジオが流れていた気がする。おじいちゃんはしめ飾りの職人で、だからテレビのような目を使う娯楽は避けていたようだった。職人らしい、といえばらしい頑固な人だった。固いのは意志とかその他の精神的な部分だけじゃなく頭もそうで、たとえば私の学校での「身体測定」のことは必ず「身体検査」と呼んだ。十二年間訂正し続けたが結局通じることはなく、大学では「健康診断」となりこちらは素直にそう呼んでくれた。何が違うのか。
そういうわけで、私はおじいちゃんとまともに会話をした覚えがない。私からの一方的な報告とおじいちゃんからの気まぐれな言葉の断片。あれがコミュニケーションとは思えないけれど、同じ空間を共にするのは嫌いじゃなかった。
来週は三回忌。ヒロキにも保育園を休ませて帰郷する。おじいちゃんにひ孫を抱かせてあげられたのは私の誇りだ。いずれこの子にも、ちゃんとおじいちゃんのことを語って聞かせるつもり。だから、今から少しずつ書き起こしておこうと思う。
三題噺やってみた(H3BO3) 夏野けい @ginkgoBiloba
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