痛みと共に生きていく

古池先生の小説が好きです。女性が感じる痛みを彫刻刀で削り出し、丁寧に並べていくような鋭さと切なさを伴った文章が好きです。古池先生の小説を読むとこんなどうしようもない痛みをわたしも知っている、今でも覚えていると、決して不快ではなく、思い出します。普段の生活では蓋をしているような、鋭い眼を持つ自分の心や存在を思い出します。

外面は美しいものの化け物じみた依存心を持った類と、外面は平凡だけれど自立した精神を持った高木さんはタイプの違う男性で、里香はどちらの手を取るのだろうと最後まで目が離せませんでした。里香は自分の痛みを思い出すことで自分の形を取り戻し、新しい自分と出会ったように感じました。そして類も。

どの登場人物も少しずつ、あるいは大きく欠けていて、だからこそ愛おしさを感じました。これからも古池先生の小説を楽しみにしています。いつも素晴らしい作品をありがとうございます。