第29話 再度の街と現状

 「つまり…アレか?なんかしらの俗称か?welcome to underground…とか言っちゃう人か?……え、やだ怖いんスけど」

 

 頭も胸も残念な人なのか?と思い、体を思いっきりベッドの端へと移動させる。


 「なんだろうね。その言葉は知らないけどとっても不愉快な気分になったよ。後、何処をど見て哀しそうな顔をしてるんだい?」


 やべぇ…鋭いぞコイツ。


 「まぁ、外に出れば分かるかな?君の居た世界とは多分違うだろうし」

 

 そう言い俺の手を引いて立ち上がらせ、そのまま外へと引っ張り出す。


 「ちょっ!?なんスか!電波すぎる人とはちょっとその……………え?」


 そして外へと出る。そしてそのまま丘の上まで連れられた。


 「どうだい?思い出すかもしくは思い知ったかい?」

 「…………………ど、どうなって……」


 周りには土や草木、岩等がある。だがその先、地面の切れ目や地面の先に空が浮かんでいた。


 「訳がわからねぇ…なんだよココは」

 「だから言っただろう?ここは浮遊島スライフォード、そしてこの世界はゼプニスだって。ウイ君の世界史では浮遊島なんて無いのかい?」

 「そ、そんなモンあるわけねぇだろ!?浮遊?島が?どうやって!?アニメの世界じゃねぇんだぞ!?」

 

 目の前の風景が信じられない。地球では考えられない光景にただただ混乱するだけだった。


 「とりあえず洞窟に戻ろうか。その後に街へ帰るよ」

 「……」


 何も言えない。今はただ近くにいたこの女に、手を引かれるがまま移動するしかなかった。


 「もう一つ教えておきたいけど…今は頭の中を整理して落ち着いた方がいいね」


 ポツリと女が呟いたがそんな言葉など耳に入らなかった。


 「パパ〜!どこ行ってたの?リシアに変なことされなかったの?」

 「うわっと!?こら、いきなり飛びついたらあぶねぇだろ?あと変なことって………なんだ?」


 洞窟の扉を潜った瞬間、その子に飛びつかれ慌てて受け止める…がその子に聞きたい”なんだ?”とは別の疑問が沸いた。


 「されてないならいいのー!んゅ〜パパの匂いなの!」

 「うはっ!ちょ!くすぐってぇ!うはは!ちょ、ちょっとまて!うはっ!ま、待ってくれ!」


 胸の中でグリグリ頭を擦り付ける女の子の頭を優しく押さえる……異形の手で。…そして足も同様に異形になっていた。


 「お、戻ったな。リシア…もういいのか?」

 「とりあえず今は…ね。そろそろ街へ戻ろうか……ウイ君?」

 

 奥から羽男が出てきて女と話すがそれどころじゃない。


 「おい?なんで俺もコスプレさせられてんだ?……この手…あぶねぇだろ。なんか本物の石で出来てるっぽいけど…」


 「あ、あぁ……それも街に着いて屋敷で話そう。ではひとまず帰ろうか…シオン君は君が抱っこして連れてきてくれ」

 「お、おぅ。………分かった。まじで説明してくれよ?……あ〜シオン…ちゃん?ほれ、肩に乗せてやるから胸から離れてくれ」

 「シオン…ちゃん?パパはシオンのことをいつもシオンってよぶの!ちゃんなんてヤなの!」

 

 いつも?……なんだ?俺はこの子と初めてあった…っ!?いってぇ…コレは考えちゃ駄目なのか?


 「わ、わかった。…シオン、肩車してやるから1度降りな?」

 「わかったのー!………ひゃあー!高いの!もっとなのー!」


 肩車をするとはしゃいで喜ぶシオンに頬が自然と緩んだ。


 「おけ。んじゃ街とやらに行くかー。えっと…リシア…さんに、ジェバル…さん?案内頼んます」

 「やめてくれ。リシアでいい。それとその変な喋り方もしないでいいよ」

 「私も同じだ。ジェバルでいいぞ?ウイよ」


 なんだろう…初めて会うのになんか懐かしい?リシアはよく分からないがジェバルは何故か信用できる気がするけど何故な…っ!?コレもかよ!


 「…頼むわ二人共」


 そして森や平原を抜けて街に向かう。




 「おぉ…これが街か?凄い壁だな…つかこんな建物の形初めて見たわ…」


 地球とは異なる世界……異世界、か…いやそんな筈は…


 まだ認められない。


 「ウイ君、街に入る前にコレを付けておいてくれ」 

 

 そう言ってリシアから指輪を渡される。


 「コレは?」

 「…まぁ、怪しまれない為の道具だよ。それとフードも被ってくれ」


 ロープのフードを被り検問所へ向かう。


 「次、身分証明を出してくれ」

 「身分…証明?」

 「ウイ、その首にかけているプレートだ」

 「あ、あぁ。コレか……どぞ」


 ジェバルにそう言われ、首から下げているプレートを渡した。


 「あ、人族か?……さっさと入れ。問題を起こすなよ」

 「え?あ、あぁ……なんだ?なんか俺、嫌われてる?」


 リシアやジェバルの時とは違う態度に戸惑う。

 

 「しかもアレ…革鎧、だよな?革鎧と羽の組み合わせとか……すげぇセンスだな。羽を付けるのが流行っているのか?」


 あ、もしかして俺も羽付けないと駄目なのか!?い、いや…リシアは付けてないが普通だったよな…ならなんで?


 「リシア、この街ってなんか特別なルールでもあるんか?あの門番みたいな奴の態度が俺だけ酷いんだが…」

 「……それも屋敷で話すよ」


 そう言われてリシア達に連れられて屋敷へと向かった。


 



 「おぉ…ここがジェバルの家か…デケェな」

 「まぁ、入ってくれ。私はコルピを入れるからリビングで待っててくれ…ここだ」

 「私は濃いめでお願いするよ。よし、じゃあ何から話そうか……」

 「あ、待ってくれ。その前にこの手足のコスプレ脱ぎたいんだが……どうやって脱ぐんだ?さっきから引っ張ってっけど脱げないんだよ」


 寝てしまったシオンをソファーに寝かせるのもかなり慎重にならないといけなかったし、この手じゃコップを割りそうだと思いリシアにそう頼んだ。


 「……ごめん。私じゃ無理だった」

 「え”?どうすんのコレ…不便で仕方がねぇんだけど」

 

 まじか…どれ位このままでいればいいんだよ!?

 

 「そうだな…強く念じてみるんだ」

 「くそっ!脱げろ!剥がれろっ!だぁっ!邪魔なんだよ!…ってうぉっ!?」


 強く念じ、怒鳴りながら引っ張るとバキバキと石が剥がれだし床に落ちた。


 「……ホントに剥がれたよ……なんだよコレ?」 

 「ほら、コルピが入ったぞ。む、剥がれたんだなその石。…よかったな」


 ジェバルがコルピを手渡してくる。


 「あぁ、訳がわからんけどな…」

 「……さて、ジェバル氏が来たことだし話そうか」

 

 リシアがそう言いコルピを一口飲む。


 「ウイ君……君は記憶を失っているんだ」

 「あ?……なんだそりゃ?俺は今までの記憶なんて失っちゃ…」

 「ウイ…シオンの事は…思い出せないのか?」

 

 いきなりそんな事を言われ混乱するが、ジェバルにそう言われシオンを見る。

 

 「その子…は…っぐぅ!」


 記憶をたぐろうとすると頭痛がする。


 何故だ…知らない!…筈なのに……っ!


 「ウイ君!無理をするな…わかった。記憶についてはゆっくり思い出していけばいい」

 「あ、あぁ……ホントに…俺は記憶を……?」

 「……よし、次にいこう。ジェバル氏、鏡はあるかい?」

 「あぁ…ほら。コレを使ってくれ」


 ジェバルが引き出しから手鏡を取り出し、それをリシアへと渡す。


 「…さぁ、コレで自分の姿を見てみなよ」

 「え?あぁ………あ?」

 

 自分の姿に間抜けな声が出た。

 身体は石のコスプレが落ちて少しガタイが良くなってるが普通だ。

 だが顔…額には枝が組み合って出来たような二つの角と…目の色が紅くなっている。


 「おい?……なんだこれ。なんか厨二臭いぞ!?…っぐ!と、取れねぇし引っ張ると骨までいてぇ…誰がこんなイタズラしやがった!」

 「ウイ君?こすぷれが何か分からないが…恐らく違うよ。その角は…生えているんだよ」


 その言葉で角の根元を見て触る。


 「…付け根が盛り上がってる?確かに貼り付けた様には見えねぇ…特殊メイクか?いや…ならなんで骨まで痛んだんだ?」

 「ウイ君…君は何故だか分からないが人種から鬼人の様な種族になったのかもしれない」

 「鬼人って……?」


 それからこの世界の事、亜人種や魔族のことなどをリシアとジェバルから教えられた…


 


 


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