第2話官邸2
危機管理センターでどよめきが起きる。
次々と屠られていく化物達。
テレビのリポーターも救世主だ勇者などと叫んでいる
「これも、喜んでばかりはいられんな。」
岸は苦しそうに、目を少し閉じて溜息を吐いた。
「これは良い事ではありませんか総理。誰かは分かりませんが、どんどん化物どもが減っているではありませんか」
公安委員長の城戸はかなり興奮しているようだった。
岸は眩暈がする思いだった。
推薦や派閥均衡もあるとはいえ、国家の安全に係る地位に、この男を最終的に任命した自分に苛立ちすら覚えた。
「城戸君、彼らは恐らくあの化物達と敵対関係だろう。しかし我々の味方とは限らんのだぞ」
「しかし、同じ人間ではないですか」
「君にはあれが、あんな戦いをしているヒト型の生き物が、我々と同じ人間だと思うのかね・・・
それにだ、仮定での話だが、化物の方は最悪自衛隊、いやアメリカに頼らなければならないかもしれないが、兵器で何とかなるかもしれない。しかし、あの化物を倒した人間と同じ形をした生き物に、兵器を使用する事を世論が許すと思っているのかね。もうすでに救世主扱いなのだよ」
「それは・・・」
城戸はそれ以上は何も言わなかった。
当然である。化物達ですら、警察の武装では対処の仕様がないと思わるのに、それを次々と屠っていく者達。
それが、人間に牙をむいた場合の対処方法は限られる。
「同士打ちが助かるのだが。。。」
誰にも聞かれない独り言を呟いた時、首席秘書官の桐谷が耳打ちする
「ホワイトハウスと繋がりました」
「少し失礼する」
岸と桐谷は危機管理センターを出た
ホワイトハウスとのやり取りは、決して実のあるものではなかった。
それもそうである、他国との武力衝突でもなく、現状正体不明なものに対して、直ぐには手助けできないとのことだった。
ただ、一つだけ収穫があるとすれば、ホワイトハウスが持っている機密情報を含めても、過去に類似例は無いとの事だった。勿論、他国の関与の可能性も極めて低いとの事だった。
どうやらX-ファイルは存在しないらしい
危機管理センターにも戻った岸と桐谷は、モニターを見て息をのんだ。
民放の一社が先程よりも接近したため、戦っている者たちの姿が少し鮮明になったいた。
人数は5名の様だ
中世のフルプレートアーマーのような物にと強大な盾、剣を手にしている者
軽装の弓を持つ女性、真っ白な修道服を着た女性、ロングソードを持つ青年
そして、円陣の中央で真っ黒なローブを纏、杖のようなものを突きあげている女性
ローブを着た女性を中心に地面に模様が浮かび上がっている。魔法陣である。
急激に光を増していく魔法陣。
次の瞬間全てのモニターが光に包まれた。
魔法陣からの強烈な光でモニターが真っ白になった直後、爆発音が追いつき流れた。
だが、戦闘が行われていた場所の一番近くにいた民放の画面が砂嵐になっている。
危機管理センター内の誰も声を出すことが出来なかった
民放、公共放送の4社が現場に到着していたが、今はどのモニターも焦点が有っていないようだった。
数十秒後、各社のモニターが先程まであった、魔法陣の中心を映し出している。
リポーターは口々に化物達の消失と、円陣の中心にいた5人が誰一人かけていない事
そして、最接近していたヘリが墜落している事を伝えていた。
吐き気のするような様相だった。
既に半壊の以上の状態ばかりの商業ビル群であったが、今では瓦礫の山と化している。
生存者も、その救出も絶望的だと見るしかないだろう。
「城戸君、彼らを救世主だと思うかね」
岸の言葉に、青くなった城戸の顔は、更に大量の脂汗を浮かべた。
「皆、充分に理解できているかと思うが、これは未曽有の厄災である。最悪、あの場に立っている5人の人間らしきものと戦闘を行う可能性も考慮に入れなければならない」
その場にいた全員がこくりとうなずく。
防衛大臣の押谷と統合幕僚長の古谷はうなずいた後、これからなすべき事を考えてか、二人とも目を閉じ眉間にしわを寄せていた。
「彼らへの聴取はどうしましょうか」
警備部長の田島が言った。
「彼らへ最初の接触は警察庁ではだめだ」
「彼らは明らかに犯罪者ですよ。それを」
苛立つ田島の言葉を遮り岸は告げる
「では、君は彼らを留置所なんぞに閉じ込めておけるとでも思っているのかね。」
「しかし」
「彼らに、完全に敵に回ってもらっては困るのだ。すでに被害は出ているが、今のところ国民を殺すのを目的として、攻撃はしていないようだ。最低限必要なのは、我々を敵と認識させず、友好的に退場願う事だよ。退場先はまだ決まっていないが。
今回は外務省にでてもらう。岩崎官房長官、私は少し出なければならない、後の事と会見の準備を頼む」
後から入ってきた、官房長官に指示を出し桐谷とともに部屋を出た。
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