第8話魔族の王2
「まずい、まずいぞシェイラ。」
テレビコーナーまで行って巨大スクリーンの前で冷や汗を流すクライドル。
モニターには、眷属たちが福岡の街で暴れまわっている姿が映し出されている。
今にも逃げ出しそうなクライドル。
「魔王様落ち着いてください。眷属たちを制止できないのですか」
「む、無理だ遠すぎる。お前も分かるだろ、東京ー福岡間だぞ。飛行機で2時間以上だぞ。」
知識は見事に定着している様であった。
「これは相当な死者が出ているぞ、何でこんなことになってしまったんだ。」
クライドルはモニターの前で震えている。
眷属たちは大暴れである。
「魔王様落ち着いてください。この国ではこういう時は夢だと思え!夢だったことにするらしいです。」
「それは現実逃避だ、何の解決にもなっていない。汝は一体、何の知識を入れ込んだんだ。」
「ラノベ、某匿名掲示板、漫画の割合が多いようです。」
「シェイラよ、それはダメなやつだ。」
魔王は己の腹心のこれからを考えると頭が痛くなってきた。
「あれは、人族の侵略者共ではなか。」
スクリーンに眷属たちに囲まれた5人が戦っている姿が映っていた。
「あいつらも飛ばされてきていたのか、ならば、尚更この世界に飛ばされた理由が分からぬな」
クライドルが考えをまとめようと、モニターから意識が離れた瞬間
「魔王様、大変です。人族が大魔法を使おうとしています」
クライドは卒倒しそうになった。
「ば、馬鹿な。あそこにはとんでもない人数の人族がいるんだぞ。」
そういっている間にも、魔法陣はどんどん大きくなり、光を強めていっている
もはや、クライドルもシェイラも声がでない。
モニターは光に包まれた。
正常に戻った画面の映像は惨憺たるものだった。
クライドルは今にも崩れ落ちそうだった。
魔王を名乗ってはいるものの、争いを好まず、平和的に隣国関係を保ってきた。
人族に関しても、魔族領に住む者には偏見、差別をせず、国民の一人として扱ってきた。
それが、万の単位で一瞬にしてその命を駆られたのである。
クライドルは怒りに震えた。
一方的に侵略をしてきたうえに、無辜の民を大量に死に至らしめるとは。
「魔王様落ち着いてください。残念ながら我々魔族は、こちらの世界では人類の敵の様です。」
クライドルはがっくりと肩を落とした。いくら義憤に駆られても、こちらの人々の知識では、魔王とは人族を殺したり、奴隷にしたり、そういうイメージばかりだった。
「我が国には奴隷などおらぬというのに。」
「しかし、安心してください魔王様。最近では、魔王のイメージも良くなってきている様で、ファストフード店で真面目に働いている方もいらっしゃるとのことです。」
クライドルは肩を落としたままシェイラをジトリと睨む。
「おいシェイラ、あまり聞きたくないが、汝のその知識のソースはなんだ。」
「大人気ラノベです魔王様。」
「もうよい。」
ソースは何だという当り、多少クライドルも毒されてはいるようだった。
「ともかくだ、あいつらが好き勝手に動き回ると、とんでもない被害が出る。汝も分かっておるだろうが、この日本という国だけで、元の世界の倍近い人族がすんでおる。どうにか被害が大きくならないようにしなければ。」
「畏まりました魔王様、では手始めに、某匿名掲示板で人族の勇者をディスるスレを立ち上げます。」
「まてまてまて、偏り過ぎだ。」
「まあ、取り敢えずは拠点を構えない事にはな…」
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