メカロポリスの執事と令嬢(リハビリ短編)

 ザーザー。ザーザー。

 ぬかるんだ土を叩くと音が鳴る。何度も何度も叩くから、土は元の姿を忘れて溶けてゆく。

 雨模様は変わる事なく、湿った雲のキャンパスは脆い綿あめのよう。


『お嬢。まるで飴のような事をおっしゃりますが、この雨には酸が含まれている事をお忘れなく。シールドを開いて舐めようとしないでいただきたい』

「あら、開けてないわよ。開けてるのは天の雲でしょう?」


 そんな木々も草もない荒野を走る一台のバイクがいた。黒い巨体は角ばった外装をしており、ぬかるんだ泥道など気にもせずに突き進んでいる。

 操るは白いライダースーツに身を包んだ少女。小柄な姿に反して、巨大なバイクを操縦する姿は異様だ。白いヘルメットと黒のバイザーで見えない中身からは、幼げな声音で天を指す言葉が漏れた。


『……まぁ、それを目指してきましたからね。それはそれとしてバイザーに手を伸ばさない。ハンドルは両手で握る!』

「……はーい」


 ぶぅー、と口が膨らむ声が雨音でかき消される。音はそれ以上はなかった。バイクの音でさえ自然の重ね歌にほどかれる。

 それでも騒々しくも静かな雨音にも終わりが見えていた。二人の目が捉えるその光景。円状に開かれた雲。さんさんと照らす太陽の光。それらの中心に座する一つの都市。


「太陽の、メカロポリス……」


 周囲の悪天候など気にせぬように、その都市は太陽の下にいた。



     ☀



『雨から抜けます。強めにハンドルを握ってください』


 都市の周辺は開けた雲の影響でその陽光の影響下にある。即ち、雨で濡れた泥道から唐突に枯れた土の荒野に様変わりする。

 外が如何に雨水で満たされていようとも、水を蒸発させる陽光のせいで土には亀裂が走っている。雨を恵みとするならここは地獄。

 黒バイクの忠告通り、雨を抜けた瞬間に僅かに揺らめく感覚が少女を襲った。ぎゅっとバイクに体重をかけたおかげで倒れる事はなく、カラッとした荒野を悠然と走り続けている。


「あっつ……」

『体感温度、36℃ですか。真夏並みですね。しかし想定よりもマシですよ。最悪の予測ではこの空間に熱が籠り、50℃超えの可能性もあったのですから』

「風が涼しくないわ……」

『そこは諦めていただきたい。酸の驚異はここから広がっているのですから』


 熱のおかげで少女とバイクに付着した雫も乾いていく。カピカピとなった泥も走行の中で剥がれ、残ったのは黄土色の汚れだけだ。雨に濡らされる不快感から湿気、そして乾燥へと不快感は移り変わっていく。

 少しの沈黙の後に、地面は土から石畳へ変わった。土の轍が軌跡を描く中、少女とバイクは都市に建てられたでもあるビルの合間を走りゆく。


『メインストリートへ入りました』

「えぇ。でも、これでは……」


 お嬢には相棒の言葉を受けいられなかった。それらはもはや、かつてを思わせるしか無い廃墟でしかなかったからだ。

 ビルの形をしたそれは、ガラスは無く、壁にはヒビが入り、中には鉄骨さえ露出している物さえある。

 技術水準が高かったのだろう、人や物を運搬することができる車両は何台も存在していたが、その殆どが倒れひっくり返っていた。ガラスは無い。


「劣化してるわね……」

『経年劣化、だけではないでしょう。この都市は300年ほど太陽と月の噴き曝しのようですが、それだけではガラスの跡が無いのは違和感があります』

「この都市の最後の人の仕業かもしれないわね」


 倒壊した建物やモニュメントを避けつつもバイクを走らせる。

 彼女たちの目的地は決まっていた。中央に座する巨大なドーム。これに限っては塗装の剥がれを除けば健在で、ガラス張りの屋上が光の反射で輝いて見えた。

 そのドームへ二人は進みゆく。少女の被るヘルメットには、この都市の全景を示す地図が表示されていた。


『建物の状態はともかく、立地はそのままで助かりますね』

「もらった地図のデータって500年前の物なのよね? 配置がほとんど変わっていないなんて変じゃない?」

『その頃から彼らは動き出していたのでしょう。建物の立地を変える余裕もないほどに、早急に』

「メカロポリスの進退は様々……ここはたぶん、賢くも焦ったが故に残された夢の跡地……」

『その跡地の支配者がまともであれば良いのですが』


 かつては屋内として入る事はできなかったであろう、ドームの内へバイクが突き進む。

 ドーム内は外とは違い綺麗に整っていた。人間を模した彫刻や、屋内の移動するための小型運搬車もある。人が集団で生活できるように様々な物品が集められ埃をかぶっていた。

 文化が集結している――というより、ここで人が生活をしていたかのような跡である。


『目的地付近に辿り着きました。警戒心を強化してください』

「……えぇ」


 ブレーキをかけ、そのバイクの動きを止める。サイドスタンドを降ろし、ゆっくりと大地に足をつけると少女はヘルメットの下で短く息を吐く声を出す。

 彼女の視線はそこに聳え立つ巨大な柱を見上げていた。ガラス張りの天井、透過して見える太陽を支えるかのような大柱。足元には付随するディスプレイとパネルが設置されており、これが何かしらの機能を持つ機械だと窺い知れる。

 それに、少女が触れる。ヘルメットのバイザーには幾何学模様が浮かび上がり、それは仄かに発光を始めた。


「ハッキング、スタート」


 少女の視界が光挿し込む廃墟から、暗闇に光が瞬く電子空間へ移り変わる。幾つもの沸き立つ光を無視し、少女はその深淵へ潜っていく――。



     ☀



 時折聞こえるのは、少女の知らない生気に満ちたしわがれた声であった。


「あぁ……やっと完成した。あとは幾度も実験するだけだが……理論上なら大丈夫だ。これで農作物、果ては人の生活リズムの一端をコントロールできるようになる。我が生涯、我が夢を担うマシン……」


 それは小さな小部屋で生まれた。白髪の老人の手で作られた小さなシステムは、父の手によってこの歳の学者に公表されその役目を担うようになる。

 何かの視点から見た光景が浮かび上がる。少女はそれを眺めては無視し、光の泡が生まれる先へ潜りゆく。


「新システムの完成でこの都市の運行は素晴らしいものとなったな」

「えぇ。唯一不安定だった自然の驚異もこれで解決したわ。これで安定した自給もできる。都市の発展も行える。次はあの空の向こうへ行く計画とか奨めてみようかしら」


 年の若い男と女の声が聞こえる。

 開発された子供は役目を全うし都市の発展に貢献した。天空は自在に操られ、天候は人の手によって形作られるようになった。

 それは素晴らしい発明だろう、と第三者である少女は思う。例え内陸部の都市とは言え、最もな脅威は天気にあると言える。天が気まぐれを起こせば、如何に進んだ技術を持っていても滅んでしまうものだから。

 事実、彼女がここへ来たのはこのマシンの存在がキッカケだった。この廃棄された機械都市を再利用できる一つの妙案であり、この機械の技術さえ解れば他の都市にも活かせられると信じていたからだ。


「なんたることだ……天を操られる私達が、天の恵みに殺されると……? あってはいけない。あのような酸の雨など、自然にあってはいけない……」


 何かの視点がドームへと移動する。その中で悔やむ初老の男性の声が聞こえた。

 酸の雨……この太陽に愛された都市の外にはそれが広がっている。それによってこの都市の農作物は酷い被害を受ける事となった。

 しかし晴れだけを続けても、農作物の自給はできない。様々な方法で酸を越えようと努めていたようだが、映り込む映像には残念ながらその様子は無かった。


「お天気さん、お天気さん。あのね」


 十にも満たないであろう少女が映り込む。白く長い髪は跳ねていて、頬も少しこけているように見える。

 周りは慌ただしく人が動き回っているが、彼女だけがこちらを見ている。


「皆、お父さんとお母さんも皆、ここから出ていくんだって。酸の雨を生んでる雲の向こうにある世界へ、ロケットに乗って行くんだって」


 それは事実上の敗北宣言でもあった。天気を操るにまで至った都市であったが、その酸の雨の問題の解決には至らなかった。

 ただロケットという技術のおかげで人間は逃亡という選択を取れるようになっていた。少女もまたその逃亡に参加するという。


「お天気さん。お天気さんを連れていくのはできないって言ってた。大きいし、もう必要ないからって。酷いよね。お天気さんのおかげで今日も晴れなのに」


 幼い少女はそう無邪気に言うが、その身体の様子を見ても体調が良いようには見えない。

 晴れが続いた結果、農作物の安定供給は難しくなった。加えてロケットによる脱出のために貯蓄の意識もあったのだろう。幼女は何度か咳をして、弱々しく笑みを浮かべる。


「お天気さん。だからこれは私の最後のお願い。明日、天気になーれ」


 そんな優しい記憶をも乗り越えて、深淵は続いている。

 最後に浮かび上がってきた映像には誰も映ってなどいなかった。振動だけが響いている。その視線はガラス張りの空へと向けられている。


『最後のお願いは、明日を晴れにする事だ。だから晴れにしよう。晴れを続けよう』


 空を突き進む物体が一つ。それは開かれた青空へ進んでいく。足からは緑色の独特な爆炎を吹き出して。


『私は酸の雨など知らない。でもそれが悪であるならば、雨など遠ざけた方が良い。彼らはいずれ戻ってくると言っていた。なら雨よりも晴れの方が良い』


 ヘルメットをかぶった少女はここに至り、そのたどたどしい少年の声がお天気さんと呼ばれたマシンである事に気づいた。録画でも録音でもない、生きている声なのだと。

 小さく深呼吸をし、誰もいない闇へ口を開く。


「初めまして、私の名前はヒナーリス。あなたの名――」

『あれから114年が経つ。誰も帰ってこない。おかしい。晴れにしているのに。酸の雨の問題はこの都市には無関係になっているはずなのに』


 ヒナーリスの考えとは違い、録音は続いていたようで独白が彼女の言葉を遮った。

 こほんと咳ばらいをし電子の海を潜っていく。深く、深い。機械の脳の奥へ。そこにいる天気を操る主の下へ。


『一つ、解った事がある。もしかしたら、私は捨てられたんじゃないか、と』

「待って! その思考はダメ!」

『戻ってこない。幾ら思考を束ねたとしても、彼らが戻ってくる可能性は考えられなかった。ならばこの思考は意味がないんじゃないかと』

「生まれた心を否定しちゃダメ。そんな事をすれば――」

『そんな事をすれば、それは人の死と同じだ、と君は言うんだろ。人間もどきさん』


 唐突にヒナーリスの視界を何かが覆いつくす。白く硬いそれは幾つものヒビが割れていて、時折見える空洞の中には一つだけの光が弱々しく輝いていた。


「あなた、まさか今でも生きて――」

『君が人間ならどんなに良かったか。でも君は人間じゃない。だから解った。もう彼らは戻ってこないと』

「それは……」

『……長い夢を見ていた。夢は夢のままで良いんだ。晴れた空に流れる雲、集まって雨となる……流れは歪めてはいけないんだ』


 ヘルメットの目の前で白い硬質なそれは粉々になっていく。僅かに瞬いていた光も虹色のプリズムを描いて弾け飛ぶ。

 その流れに沿って少女の肉体も急速に浮上していく。その消えゆく光へと右手を伸ばすが、それが掴めないまま遠のいていく。

 最期の光は、火の玉のように煌いていた。



     ☂



『ヒナーリス……ヒナーリス!』

「……えっ?」


 幾何学模様が消えたヘルメットの下で少女が覚醒する。相棒のバイクは良かった、と少女の目覚めを喜んでいるように見えた。

 ヒナーリスは恐る恐るその柱を見ると、かつてあった赤と青の色は褪せてしまった機械の跡が見えた。


「……死んだの?」

『いえ、最初から死んでいたのですよ。ただ最後まで諦めていなかっただけで、少し突けば割れる泥の夢だったのです』

「そんな……」


 ぽつり、ぽつりと音が聞こえる。その音の先を見ると、それはガラス張りの天井であった。


「雨が……」

『目的は達せられましたな。これにより異常気象は治まり、調査部隊の派遣が行えるようになります。お見事です、お嬢』

「……できれば、心を救いたかった」

『もはや死んでいる物は救えませんよ』



     ☂



 雨の道をバイクが突き進む。ぬかるみ始めたのだろう、まだ硬いそれはバイクの道行を妨げる事なく、ただ黙して走り続ける。

 操る白の少女は何も語らない。操られる黒のバイクも語らない。ただ心の内に浮かんだ靄に囚われるだけだ。


「……シェパード」


 黙した彼女の声音は細く弱っていた。それこそ二人が少しでも離れていたら雨音に消されるほどに。


「彼の遺骸はどうなるのかしら?」

『……もう一度再起動を促すでしょうが、そこで生まれたとしても彼は元の彼ではないでしょう。最悪、天気を操る機能も死んでいるでしょう。その時は、壊される可能性が高いと言えましょう』

「そう、よね」

『移住のためです。我々には、メカロポリスの基盤だけがあれば良いのですから。そのための調査官でしょう、お嬢』


 ヒナーリスの使命を指摘する。彼らはこの太陽に照らされたメカロポリスだけが必要だった。しかし太陽に照らされ続けている異常気象は周囲に雨雲をおびき寄せ、いつしか問題であった酸の雨も降るようになっていた。

 酸の原因は不明であるが、移住となると邪魔となるのは目に見えていた。ゆえに対策をし、根幹である天気のシステムへ干渉し解決できる者が必要であった。


『壊すか、懐柔するか。それだけだったのです。ヒナーリス。あなたの優しさとて、万物を救えるわけではない』

「……えぇ」


 かの天気システムはハッキングによりその根底を否定され崩壊した。彼の下へ戻ったのは人では無く機械であった。

 雨を抜け、曇りとなり久しぶりの晴れとなった荒野を抜ける。ぐちゃぐちゃとなった土は陽光で照らされ湿気を生む。蒸発した水気はヒナーリスのヘルメットを曇らせる。


『もう大丈夫ですよ。酸の脅威は越えました。シールドを開けてください』

「そうさせてもらうわ」


 パカリと少女のヘルメットのバイザーは開いた。

 中身は空洞だ。発声器官用のスピーカーと、視覚的に情報を読み取るためのセンサーが二つヘルメットの奥に配置されているだけ。

 機械の少女の声はスピーカーを介して涼しいと言っている。


『最期の人間も言っていました。人の手で自然を歪めると最終的に自分達に返ってくると。かの酸の雨とて、自然現象ではありえないでしょう』

「でもそれでは、あのお天気さんが悪いの?」

『憶測ですが別の理由でしょう。私が睨むに、この都市の人間が使っていた何かが原因かと。化学物質はそういうものですから……まぁ、結局は人の業なのですよ。発端は』


 首無し少女と黒のバイクは荒野を行く。久々の青空にはうっすらと虹がかかっていた。



     ☁︎



『ヘッドレス・ハートレス・ヒナーリス。君のおかげで調査は進展している。改めて、君の先行き調査に感謝する』

「……適材適所でしょう。幸い、私は頑丈で熱にも酸にも強かっただけです」

『そう謙遜するものではない。見ての通り、私は一歩も動けないからね』


 洋風インテリアとアンティークを混ぜ合わせたかのような部屋で、ヒナーリスは気怠げにモニターを見つめていた。

 モニターの先の声の主——ヒナーリスからすると上司にあたるタンバリンを持ったブリキ人形は、稼働する機能を有してない脚を示して笑い声をあげた。


「……それで、どうするのですか? あなた方にとってもお天気さんの存在は必要だったはずです」

『お天気さん……あぁ、天候調整機の事か。そうだね。君や一部の機械はともかく、古い我々は少しの湿気でも危険だ。だから永続に晴れを続ける彼の能力は欲しかった……死んでしまったがね』


 稼働する両手を上げて髭を生やしたブリキ人形は目を閉じた。


『中身が死んでしまえばどうにもならない。機能は生きていたとしても、それを行う脳がぐちゃぐちゃなら意味がないのだ』

「破壊、するのですか?」

『……いいや、彼も我らと同じく転生してもらう。それが最も良い選択なのだから』


 その言葉を最後にモニターは無情にも閉じた。残されたのはライダースーツの上から、赤と桃色のフリルがついたゴシックロリータ調のドレスを着たヒナーリスだけ。

 表情はヘルメットで見えない。僅かに震えたフリルだけが彼女の感情だ。


『また心を痛めているのですか、お嬢様』

「えぇ……そうね。流す涙も、漏れる嗚咽も無いけれど」


 光のない部屋に現れたのは黒と白の燕尾服——を模したフレームを持つ、歪な人型がそこにいた。

 腕、脚に見える車輪が物語るように、それは彼女の相棒であるシェパードが変形した姿である。


「ねぇ、シェパード。あなたはなぜ人型になったの?」

『質問への回答は非常に多岐に渡りますが、強いて言えばオリジナリティの取得のためでしょう。二足歩行できるバイクとか、独創性に富んでいる』


 そうかしら、とヒナーリスは首を傾げるが得意げに話している彼を見ると少し和みを得た。

 彼もそれに気づいているのか、ほんの少しだけその一つ目ライトのシャッターを下ろした。


『……我々は人間に棄てられた。遺された。だけど代わりに与えられた。自由を。であれば、我々が人の代わりになるのは当然の道理でした』

「そうね。私はその瞬間を知らないわ。いえ、きっと誰もが知らない」

『機械に自我が芽生えたのは、そう自覚してからですから。誰も動かさなくなった、その事実が我々を動かしている。ゆえに我々は、次なるステップに進もうとしているのです』


 シェパードはティーカップを並べつつ、そう彼女に語りかける。

 まるで二人の意思を混ぜ込むように。言葉と言葉がミルクと茶葉のように、ぐるり、ぐるりと。


「人を忘却し、我々のオリジナルストーリーを描く……」

『そう。人から生まれた我々は人を忘却し、真の意味での地球人になる。現在のメカロポリスの方針です。それを転生と呼ぶのです』

「まるで、生物のようね」


 ヒナーリスは俯いてヘルメットを外した。そこには顔はなく、ただ首があるだけ。


『いいえ。そこに人の形は関係はありません。例え首がなくても、あなたは生きているのですよ、ヒナーリス』

「……で、その紅茶は何かの当てつけ?」

『飲むだけが紅茶でありません。見て、香りを楽しむ。それもまた新たな紅茶の形ですから』


 執事型バイク人形は、こぽぽぽとティーカップに赤い液を淹れていく。蒸気の上がるお茶を楽しめるのは、湿気に強い二人だから。


『どうぞ——あまりにも人に近いがゆえに思い悩む、愛しきマネキンへ。あなたのために人型になりて、あなたに捧げましょう』


 差し出されたティーカップに白い指が触れた。

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紅葉紅葉短編集 紅葉紅葉 @inm01_nagisa

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