詩篇;



『宇宙、それはときに懐かしさを湛えて』



焼けるようなこの胸 涙で冷やせない 「悲しい」顔をして

それほどでもなく ただじっと見つめた君の頬


いじらしくも何も知らず 腹立たしく 全知の裾にまかれて

困惑の中にたたずんでいる君


狂おしくも憎んでやまない

なぐればいいのに 君は僕を


相殺してほしい この想いもアダも身体も 

そのリンカクも


つらいよ君

どうしたらいいのさ どこに行く?


どこかに行かねばならないよ 僕は君とちがうのだから

「共に」とはふざけていて現実を見ていない

「愛を」とは 行きすぎた甘え


僕をどう殺せばいいか教えてあげようか

どう殺してほしいか教えてあげようか


君より苦しみたい僕


かき消えてしまいたい あの宇宙の果てに

そうしたら君をその恩恵ごと愛することができる


永遠に




『みじめさ』


”愛を教えて”


君はわからないと言ったけど 方式も勝手も

分からないと言ったけど


僕にとっては ありふれた味をした おもちゃに過ぎない愛

そんなものを 君は

まるで崇高なもののように言って

顔をしかめて 頭を悩ませたよね


苛立たしいよ なぜだか

「指を入れたら どろりと骨まで熔かすのかい?

ひどく危険なのか、それとも軽く痺れる程度か? もはや

取り返しがつかなくなるのか?」― まさか。


せいぜい僕を怒らせるだけ 

それも 2、3日 経てば忘れてしまうような 

程度の軽いものさ


誰でも 訊くんだよ 愛する人に

「愛を教えて」と 


それは「一般的な愛」っていう

ことのはずだけど 本当は

みじめな自分を見つめて欲しいという 合図に過ぎない

息を吹きかけて


マホウがかかるといいよ 君の住む世界に

それから 君の信じる 何かにも


そう思ったら 僕は あぁ

ためいきを少し 長くついてしまう



『冷たい』


死に近づいて悟る この身の重たさ 選択を間違えた

その罪深さ 謝っても止められない


この秩序が 崩壊していくスピードは

だれかの思っていたよりも ずっと速い

「何かがおかしい」から 「絶対おかしい」への移行


むずかしい

考えることをとうに 辞めてしまった僕には

サルになったよ 負けてしまった

地球のゲームに


敗者ならよかったけど 僕は挑戦しなかった

それがせめてもの プライドだと思って

何だか 全く意味が無かったと気付いた


うふふふ ふ 君なら僕の今がわかるだろう

落ちぶれたのか マシになったのか


ついこの間までは マシになったと確信していたけれど

今ではもう どうでもよい話


あぁ「帰りたい」なんて 「どこへ?」というかんじだ



『ミサイル』


きらりと流れ星 「はっ」と息をのむ君

なんて冷静なんだ 僕は笑ったというのに

死にゆく星を 卑下して笑ったのに

君はとがめもせず 事態を咽喉の奥にしまいこんだ


理由わけを知るための 探求

その徒労のリストが うずたかく積みあがってる


今思えば 君の事など 理解できていなかった

理解者のフリをしていたことに 気付かなかった?

君も 僕も?


生きていたんだね 精一杯に 

お互い 自分のことに忙しかった


他者ヒトを勝ち得ることの苦しみも 幸福の価値も

本当の意味では 知りもしなかった

ほかのことは…よく知っていたけれど


暗い穴 この世界では「ブラック・ホール」と呼ぶ


ほうりこまれた物は多かった

新しく出てくることを期待されて


君は「不法投棄」をいち早く 指摘した

「流れ星注意報」ならぬ「不用物注意報」

その通りだったね


何度見ても同じだった 変わらぬ清らかさ

変わらぬ距離 変わらぬ傷と 血


僕は 自分をいためつけるのが 

ただ 好きだったんだ


手に入らないものは 真実の味がする

それがたまたま 君だっただけなんだ


気付いていた?

君も? 僕も



『告白』


おそらく君に

僕は必要無かった


そうだろう?

まちがいない


君はやさしかったんだ

僕の求めるときとそうでないときを 計っていた


それとも僕は実験動物だったのか

非人間的な君の

感情を知る手立てにするための

可哀想な生き物


でも…

でも…それならいいんだ

それなら



『見世物』


かわいそうなのか とそんな目で

うすい紙を見つめた君 どうしても欲しかった


多くの人たちに囲まれ 輝いている君

どうしても僕の友人だと 主張したかった


僕は…もしかして 在なかったのか?

目が合う…そんな単純なことを 喜んだ僕

気のせいでは無かったはずだ


今だってそうだ 君より昔を思い出せない

それは君が 何かを僕にしたからだ


それは…まずいことだった しかし

僕の永遠の愛に資する何か 価値あるものであった 申し訳ない


僕は くり返しの人生の中で 

どれほど君を思い出したのだろう


永遠なる一瞬 それが

一人の人生になるほども きっと 思い出してはいまい


ごめんね 僕はやはり 今も 

鏡の中の「僕」


偽ってはいないんだ でも 向き合ってはいない

苦しいんだ 本当は


胸がイタイんだよ 僕の愛が本物でなかったら なんて


贋物であった 

これまでの数知れない「僕達」が 一斉に抗議する

「人を愛せない 人でなしが」と


そうだろう

僕は 泉を湛えたまま

不在者の謎君の行方を掘り下げない


自分の似姿を 

君の像として捧げてしまう


許されるだろうか

僕は君に問う

あぁ 愛しているよ

the Infinite…

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POLAR TRILLS ミーシャ @rus

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