アンチチート、無能力のお手本のような小説

アンチチート、無能力主人公
なかなか書きづらい題材だが
この作品は上手くそれを料理していた。
同じ作者としては尊敬に値するレベル。

約二十万文字とそこそこボリュームがある。
作者様の連載のモチベーションの
少しでもの足しになればと
随所気に入ったエピソードは
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少しネタバレになるかも知れないが、
近況ノートに感想欄も無いようなので
少々詳しくレビューさせてもらおうと思う。

まず、能力バトルにしてもバトルフィールドにしても
設定がしっかり作られている上に
人物の行動をリアルタイムで追跡し
その場にいて見ているように錯覚させる描写力。

また、お互いの能力が分かっていないという
心理的不安要素を主人公側からだけでなく
敵側からも描写していたのがとてもよかった。

命の駆け引きにおいて相手の得体が知れない事が
どれだけ行動を慎重にせざるを得ないかが
しっかり伝わる心理描写。
能力の使い方や相手の能力の考察なども
自らしながら読むと推理ものに近い楽しみ方もできる。

視点変更は疲れるという理由で嫌う人もいるだろうが
この作品に限っては魅力でしかない。
どう感じ、どう考察し、どう動くか。
人物ごとにしっかりとその違いを
描写して出せているのでその内容も見物だ。

物語が進むごとに変わっていく人物関係
主人公のヒロインに対する複雑で狂気にも近い愛、
主人公の戦いに対する心境の変容も通して読むと
面白い要素の一つとなっているのではないか。

個人的に最も評価したいのは度々ある
「緊張感のある終わらせ方」
すぐに先を読みたいと思わせるのは
一種のプロの手法だと思った。
これに関しては是非参考にさせてもらいたい。
その片鱗は二話において早速見え始めるので
とりあえず参考に読んでみようという方は
二話まで読んでみて欲しい。

キャラの名前や後半の展開まで語ってしまうと
流石に迷惑というものなのでここらで終わりにするが
これだけレビューが書ける程度には面白い。
もう少し評価されてもいい作品だと私は思う。

どんなラストになるかは全くの未知数、
それだけに今後の期待も大きい。
自らの小説の参考にでも構わない、
是非一読してもらいたい作品だ。

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