神話の謎を中心に、数多くの知略、謀略、思惑が渦巻くスパイ小説

約20万字の大長編ながら、後半は一気読みでした。多くの謎が加速してほどかれていく展開に引き込まれてしまった感じです。

ストーリーは、中国側のスパイの青年と神社の娘であり巫女である女性が恋愛関係を結びつつ、伊勢神宮に天照大御神と共に隠れて祀られているもう一柱の神の存在を突き止めていく…というのが表向きの展開です。
隠された神を突き止めていくのもミステリーなのですが、この物語のメインとなるのは、もう一つのミステリーの方でしょう。
スパイである彼の過去、巫女である彼女の過去、スパイとなった彼の目的、お互いのお互いを思う気持ち──。
物語の序盤から数多くの伏線が散りばめられ、読者のミスリードを誘っていますが、これが明らかになっていくのは後半から。
もう一度あの場面を確認せねば!と、“してやられた” 感が出てきます。

生まれもっての境遇ゆえにスパイとして闇に生きていくことの切なさ。
そして様々な思惑や感情が絡み合う、諜報作戦ならではの緊張感。
誰が味方で誰が敵なのか、守るべきものは何なのか、スパイという存在の危うさにドキドキハラハラしっぱなしの濃密な世界に浸らせていただきました。

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