おかえり。今年も帰って来てくれて、嬉しいな。
一件、素晴らしいモノに思えたが。色々制限がありまくる事を案内人に揶揄する。
「気を付け給え、軽口は結構だが私は神を侮辱する者には寛容では無いよ。さっきも言ったが、叶えたい望み、遣り残した事。ソレは死んだ後で思いつくモノなのかね?」
「神の御心を知るコトは出来ない。今回、君がここに来る事に成った出来事を、私は把握はしているが、神が君をお選びに成った理由までは知るよしも無い。私はその使いとして、君の前に立ってるに過ぎないのだから。」
「ただ、君の前には一つの選択肢が提示されている、先ほども言ったがこれは滅多に無い事だ。君が望んだ訳でも、選んで勝ち取ったモノでも無い事は認めよう。」
「しかしだ、これは君の行動が生んだ一つの可能性だ。見て、聴いて、考えて、判断する。それだけの価値がある提案だと思うがね。」
案内人は語気荒く語った。そして気が付いた、ルキノが笑っていることに。
「何が可笑しい?」
「案内人さんって真面目な人だなって思っただけ。少なくとも私を騙したり、陵辱しに来た訳じゃない事は判ったは。」
案内人はしまったと思った。見透かされたのはこちらの方だった、聡明どころか危険かもしれない。
絶対のパワーを持つがゆえに、人と言うモノを侮って見下してしまう。過去に経験した苦い思い出が蘇る。
「君が望めば、それも叶えられるよ。」
案内人は無様だと思いながらも、負け惜しみを口にせずにいられなかった。
「他に貴方が出来る事は?それと細かく状況を説明して欲しいんだけど。」
ルキノは更なる情報を求めた、案内人は渋い顔した。
、、、、面倒な事に成りそうだ、、、、
仕事には忠実であり誠実にこなす事が彼のモットーだ。ただし、対象者へ必要以上に親切である必要性は含まれて居ない。
「先ず、私は君の願いを実現させる為のサポート全般をおおせつかっている。」
「君の話を聴いて、具体的にどうすればそれが実現可能か。何が出来て、何が出来ないか。出来る場合に発生するリスク。それを説明し、実現プランを立てる。」
「立てたプランを君が確認し、承諾すれば、次に願いや望みが実現、又は実現させるための試練に挑む段階に移行する。」
「へ~凄いね~。何かやった事ないけど保険契約みたい。」
これまでと打って変わったファイナンシャルプランナー的案内人の説明に、ルキノは感想を漏らした。
「、、、、、ぶっちゃけるとだ、お嬢さん。今、私はかなり噛み砕いて誠実にこの「奇跡」の内容を君に御説明申し上げている。」
「そのせいで、インチキまがいで、チョット胡散臭い手品しか、霊感商法っぽく聴こえる事があるかも知れないが。それはあくまで君の理解のためだ。」
神の代理人たる威厳を保とうと、案内人は威厳の無い話方と言葉で反論した。
「じゃあ、アナタの本来の感じで説明すると、どうなるの?」
ルキノは興味本位で案内人に問うた。
案内人は始めは一言、一言、ルキノの理解を確認するように言葉を選んで説明したが。話して居るうちに本来の調子を取り戻し、朗々と言葉を綴り始めた。そして最後は水を得た魚の様に、「神の奇跡」のシステムをルキノに展開した。
「も、もう結構です。」
ルキノは根をあげる。
「そうか?ここからが良い所なんだが。」
案内人はとても残念そうに対象者の要求に応え、噛み砕いたサポートに戻った。
ルキノの望み、その実現プランが決まった。
「リスクは話した通りだ、本当にいいかね?」
案内人が確認をとる。
「君の望みは幾つかの手段でリスクを押さえ、確実に叶える方法が他にもあることは承知してるよね?」
ルキノは全て承知の上だと、案内人に最終意思決定を伝えた。
「他人じゃダメ。直接会って、彼の口から聴いて、私自身が確かめないといけない事なの。」
案内にはまた笑みを浮かべて鼻で笑ったが、不思議とルキノはその行為に不快感をじなかった。
「結構だ。期日の観念は理解してるね?無限と感じるだろうが、必ず終わりがある。」
「そして用意した保険は有効活用したまえ、私からのささやかなプレゼントだ。」
案内人と打ち合わせている最中に指摘された不安要素。ヘタレな彼なら充分あり得る事がソコは基本計画からして今さらな話だ、と言うか白黒がソコではっきりする。
ルキノは「問題ない」と男前に吹っ切ったが、心の中には大きな不安があった。
だがそれを見透かしたかの様に、案内人の方から次善策の提案があった事に驚いた。
案内人は「君のサポートが役目だ、気にすることは無い。」「そしてそれも一時しのぎしのモノでしかない。」「どうなるか?それは君と彼氏しだいだ。」淡々とした口調でプレゼントを渡してくれた。
「、、、、それから一言、お嬢さんに伝えておきたい事がある。私は君がここ来る事になってしまった理由。取った行いを尊敬する。行動した君自身もだ。」
ルキノはプレゼントの件以上に、案内人の言葉に驚いて見つめ返した。
冗談を言っている雰囲気は全くない、ルキノは一言でもと案内人に告げようとしたが、その間を与えず案内人は高らかに宣言した。
「気高くも迷える者の魂へ幸多からん事を。お嬢さん、求めた答えを、行って、確かめてきたまえ。」
風鈴の音が耳をなでる、ルキノは縁側に座っていた。
隣には「彼」が居た。
おかえり。
今年も帰って来てくれて、嬉しいな。
夏休みの国 蒼月狼 @aotukiookami
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