世界の姿と己の姿を見つめる物語

自分が一体何者なのかを探し求め続けている放浪者シレア。旅の途中で己と世界を包む漠然とした悪しき運命に立ち向かうため、様々な種族の者達と出会い、仲間となって行く――。
エンタメ的なRPG風ラノベといったものではなく、むしろ古典的な王道ファンタジーに属される作品だと感じました。登場するモンスターや風土、そこに生きる者達が丁寧に描写されており、緻密な設定が魅力的でした。
誰がどこで何をしているか、というのが分からなくなる事は一切なく、とても読みやすく頭に入ってきやすい文章だったと思います。
展開としてもそれまでの旅路や出会いと別れが無駄になる事なく、ラストシーンに繋がっていったのも良かったです。
最後まで読めばこの作品の根幹に流れるテーマ、作者さんの『世界観』を理解できると思うので、重厚なファンタジーが好きな方にオススメできると思います。