時計の針が重なる時に

作者 石之宮カント

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★★★ Excellent!!!

リザードマンの兄、ヒックー。
兄に拾われた人間の妹、タマル。

寡黙な兄は妹を愛した。
美しい存在だと、
丸ごと全部、愛していた。

妹は、鱗も尾もない小さな姿を恥じ、
醜く無力な自分を疎んでいた。
それなのに守ってくれる兄を愛していた。

時の進み方が違う。
残酷な時がやがて訪れる。
穏やかで悲しく、無常で当然のラストシーン。
すごく美しくて、すごく好き。

★★★ Excellent!!!

生物として違うということ。
それは、決して文化や暮らしが違うというだけに留まらず、そもそもの「存在」が異なるということに他なりません。

「存在」の違いという悲劇、それでも、もう少しだけ、時間が尽きるまでは、という一途で純粋な想いを、時計の針というモチーフで儚くも美しく描き出したその筆致は、間違いなく文学作品として恐ろしく優れた傑作です。


リザードマンというファンタジーな存在を主題にしていますが、その生態の描写や上記のような存在そのものを見る視点はSF的であるとも言えます。

のみならず、周辺を固めるキャラクターも魅力的。


美しい文章で語られる、美しい愛の物語に、心洗われるというのはこういうことでしょうか。

★★★ Excellent!!!

こういう「家族愛」を拗らせたような作品が私はたいそう好物です。

近親相姦モノ的な、あぁ、いけないことをしているという背徳的な感覚とは真逆。
家族を自分の手足といった体の一部のように愛することの美しさ尊さ。
大手を振ってそれを肯定できる潔く清らかなその生き様。
兄妹という関係性に、種族の壁というどう足掻いても越えられない要素が加わり、だからこそ健気にお互いを強く想い合う。
精神的な結びつきを強めていくストーリー。

どうしようもなく破滅的なのではない。
息が詰まるほどに美しい至上の愛。

話数をあえて年数に喩え、時計の時刻に符合させた演出の妙。
湿地でのリザードマンの生活、その生態を見事に描ききるだけの構成力。
緻密な戦闘描写。引き込まれる心情描写。
胸を打つセリフに嘘っぽくない恋の結末。
そして重要な、切り出して絵になる(漫画になる)シーンの数々。

どれ一つとして付け入る隙の見えない完成度。
短編小説として、読み切り漫画として、必要な物が全て詰まっている。
こんなもん見せられたら黙るしかね。
めっちゃ語ってるけど。

漫画で例えるならアフタ○ーンの四季賞で入賞してそうな感じ。
市川○子先生の初期短編作品的な、喪失の寂寥感と日常の幸福感に打ち震えたいなら、コレ。

上位作品読んだだけですが、現時点で私の中ではこの作品が暫定一位です。
この作品が大賞とるならもうなんの文句もねえ。

★★★ Excellent!!!

姿形の違いなんて、どうってこない。そんなものは乗り越えられる!
この物語は、そんな人たちを見せてくれます。(本当です)
けれども、そんな彼らでも時間の歩みだけは、どうすることもできない……
切ない。
しかし、彼らの生き方は、私たち読者に何か力のようなものを与えている。
そう思いました。
文章力、話の広がり方、伏線、人物の存在感など、いろんな点でレベルの高い作品です。
カクヨムにいる、多くの人に是非とも読んで欲しいと思います。

★★★ Excellent!!!

とても凝った作りをした作品。
そして凝った作りに相応しいだけの内容も伴っている。
この作品を表す要素はタグに記載されている通り、異種族で、寿命差で兄妹、どれかひとつでも違ったならそんなしこりみたいなものを感じてしまう。読後もしっぽり浸らせてくれる気持ちのいい作品でした。

恋愛・ラブコメジャンルですが、独特なファンタジー設定やアクションシーンなど色々な見所があるのも魅力。是非ご一読を。

★★★ Excellent!!!

異種婚というだけでもなぜか胸がざわめく。種族を超えた愛なんてロマンチックと思ったりもする。
しかし種族が違うというのは、姿形が異なるだけではないのだ。それは生きる時間そのものが違ってしまうということ。
昔、「ゾウの時間、ネズミの時間」という本を読んだことを思い出す。命の時間の違いは、生の本質そのものの違いでもあるのだろう。
にもかかわらず。本質の違う種族の間で愛が生まれる。癒され、葛藤し、受容し、そして…。
この物語はとても美しい。異なる時、異なる本質のままに生きたリザードマンと娘の二人は、幸せだったと、心から信じたい、信じられる物語だった。