不可思議のバルブが、開いていく。

ナニガシと呼ばれる謎の猟奇かつ禍々しい存在。そしてそれを撮影し、投稿してしまう中学生。そしてそれに追い詰められてしまう、本来ナニガシを追うはずの「イチゴ」というあやしい男。
ナニガシと追っ手とその傍観者のプロットだけだといかにも今ありがちな「現代に現れた異形」ものになってしまいそうなのに、この作者は確信犯でそれを踏襲し、そこに意外性と魅力をつぎ込もうとしている。

中学生たちはとぼけてるので、どこまでこの状況を理解してるのかわからんなと一瞬思わせながら、あるいは理解してるどころではない恐るべき聡明さを発揮する予感があったり、そのナニガシを追うイチゴたちもまたただの追っ手ではないところもしっかり書き分けられ、これからの展開の明確な伏線として、回を重ねるごとに期待が積み上げられていく。

このまま作者がその内面にすでに描かれている非凡さのバルブを開き、それを容赦なくぶちまけるこれからにますますワクワクさせられる。
コミカルでありながらチープではなく、スピーディであるけれど丁寧で、いわゆるスタイリッシュではないけど垢抜けたSFの香りがまた楽しい。
まさにコミカライズされた時の見栄えも楽しみな作品。

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