切れ味の鋭いミステリー(叙述トリック)を読んだような読後感を持ちまし
た。
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以下、若干のネタバレの可能性がありますので、未読の方は注意してください。********************************
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本当の目撃者が判明し、語り手が少年を殺害する動機がずれていたことがわかるラスト。
そして語り手の正気と狂気が交錯した瞬間に、事件の本当の真相/闇がわかる構成。
見事としか云いようがありません。
蓄積された負の感情が爆発した結果と思いきや、淡々とした目線で語られる描写がいい意味で気持ち悪く、ホラー作品として成功していると思います。
最初にさらっと読んだときには、主人公が行動に移した理由・経緯がはっきりしませんでした。
ですが、もう一度読み返してみると、ストレス起因による解離性同一性障害に陥っていたと考えるのが素直な気がしてきました。この仮定が正しいとすると、犯行時の高揚感や記憶の欠如、人格スイッチなども合理的な設定だと思います。
(作中には明記されていませんが、夜間に父親から肉体的/性的/精神的暴力を受けたことが、そもそも発症のトリガーになった可能性が高そうですね)
人間の心は誰が思っているよりも壊れやすく、そして、一度壊れた人格はだんだんと暴走し始め最終的には取り返しのつかないことになる。大体の人間は人を殺した人間に対してこう聞くのではないだろうか
「なぜ殺したのか?」
・・・・と。しかし、これはあくまで僕の考えなのだがきっと人殺しに考えなんてないんだ。ただ、憎かったから。つらかったから。怒っていたから。
そんな不の感情がそんな取り返しのつかないところまで持って行ってしまったんだ。しかし、これはすべてが殺した側に責任があるのだろうか・・・
僕はこの作品を読んでそんなことを疑問に思った。
とてもしっかりとした内容が面白かったです。最後は「えっ」と声を漏らさずにはいられない展開に感動を超えた何かの感情が胸に飛び込んでくるようでした。とにかくすごかったです!
これからも頑張ってください。応援しています。