人間の〝業〟を、生々しく描きます。

 危機管理では『最悪の事態に備えよ』という言葉がありますが、この作品の描く未来がまさにそれです。生理的・感情的に耐え難い状況を生み出し、あるいは現実的で重大な危険をもたらす、技術の悪用・誤用や副作用……。しかしそれでも、この世界の多くの人々がその技術を望み、そして望みをつなぎ続けているのでしょう。虚弱な初老(苦笑)の私も、将来の我が身の問題のように作品を読みつつ、どうしたらこのような弊害を回避できるのか?と一生懸命考えている自分に気づきました。

 現在の工業・情報技術でも、あふれるモノが捨てられないとか、リアルとバーチャルが区別できないとか、それに近い問題は起きています(反省)。人的資源の劣化を防ぎ、補うための現実の技術や、それに対する評価・政策が、今後どのようなものになっていくかは分かりませんが、こうして少しでも多くの人々が、良くも悪くも色々な可能性について考え、話し合っていくことが、文明の持続的発展の可能性を高めていくのではないかと思います。

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