ゾクリと仄暗く、美しく、濃密で。

この薄暗さを孕む作品には、美しさとまがまがしさが内包されている……そんな印象を受けました。

一人称でありながらしっかりとした筆力で、描写から何からがっしりと読者を掴む怖さがあります。ただ怖い、という類のものではありません。まるで自分がその場にいるかのような、そんな臨場感を伴って読み手を揺さぶってきます。
一話一話に力があるのですが、読み辛くなく、またキャラ立ちもしているために夜長にぴったりです。

夢野久作先生、京極夏彦先生、かの先生方の作品が好きなお人なら、きっとハマるのではないかと思わされました。もちろんそうでない方、伝記物に挑戦したい方にもオススメと胸を張って言える作品です。

この作品と知り合えて良かった……読みながら、そう感じた次第です。