興味は不確定

 中学では帰宅部だったとはいえ、他学年との交流が全くなかったわけでもない。運動会だけでなく、文化祭などの全体行事は、例えば一組なら一年から三年までというように、クラスと学年を縦割りにして合同で出し物を行う、という一風変わった学校だったから、何かしら校内に顔見知りは増えるし、親しい先輩後輩という存在もそれなりにいたわけだ。

 それが高校になって、学区も広くなれば知る顔も減り、部活もこれといってピンとくるものがない、となれば、おのずと関わり方も変わってくるもんだろうか、くらいに思っていたが、どうも最近、それが変な方向に行っているような気もしていて。

 「あー!ちょっとー、おーい、そこの前髪長い推定王子(仮)ー!」

 木曜日の、昼休み。購買から教室棟へと戻る途中の、南渡り廊下で。

 わざわざ『かっこかり』までつけられた妙な呼び掛けに、うっすらと身に覚えのあった俺は、とりあえずその場に足を止めて、一瞬迷ったものの声の方に顔を向けた。

 すると、既に小走りだったらしいショートヘアの二年女子は、おー、と一声上げて手を振ってきながら、スピードを上げて傍にまで駆け寄ってきた。俺と同じように、左手には美術部がデザインしたという『篠上高校購買部』のロゴと並んで、『Blitzブリッツ』とパン屋の名が添えられた紙袋を下げている。

 「ごーめんごめん、私、君の名前知らないからさ。なんとか呼び止めようと思って」

 「浦上ですけど。なんか用っすか」

 けろりとして言った人に一応そう名乗ると、あらためてその顔を見やる。一度しか会っていないが、部長を追い掛けて追い付いた時に靴を渡したのは、さすがに記憶はあって。

 眉がすっかり見えるほど短い前髪の下の、黒目のでかい瞳を瞬かせて頷いたその先輩は、さっそく奇妙なことを尋ねてきた。

 「ほんとだったら、あの三つ編みの子に聞くとこなんだけど、全然捕まらなくてさー。で、聞きたいんだけど、図書部って走り回らなきゃいけない活動内容なの?」

 「……そういうわけじゃないと思いますけど」

 問いに答えるまでに一拍開いたのは、とっさにうちの部長のことが思い浮かんだからだ。とは言っても、最初にそうさせる原因になったのは俺だし、次の件は元々大原と梶先輩が引き起こしたことに巻き込まれた(あの人は、出しゃばっちゃったな、と恥ずかしそうにしていたが)からで。

 でも、またそのうち走り回ることになる気がすんな、と、予感でもなく確信していると、先輩は、何故かちょっと笑って、

 「ってことは、本来はそのはずなんだよね。けど、私が見かけるたびに三つ編みの子、なんか分かんないけどいっつも走ってるから……ついでに言えば、君とセットで」

 興味津々、という内心を隠そうともせずに、まじまじとこちらを眺めてくるのに、何か居心地悪さを覚えていると、また別の声が飛んできた。

 「うおーい浦上ー、梶先輩オススメのアレゲット出来たかー……ってなに誰この人またどっかの勧誘!?それともまさか俺が邪魔しちゃいけない事案!?」

 「どっちもないから安心していいよ。ていうか君も微妙に見覚えある気がするんだけど」

 「……すいません、いい加減腹減ったんで、食いながらでもいいすか」

 走り寄ってくるなり、横にいる人と俺を見比べてそう叫んだ木原に、即座に切り返した先輩にそう言いながら、俺はそろそろ限界に近い空腹に、小さく息を吐いていた。



 それから、もう教室に戻るのも面倒なので、晴れているのを幸いに、中庭に出て。

 運良く空いていた木の影にあるベンチに、俺、木原、少し間を空けて先輩、と座ると、それぞれに飯を広げて、取り急ぎ食い始める。

 今日は朝飯を食いそびれた上に弁当がなくて、腹の減り具合が酷かった分、俺が黙々とトースト目玉焼きベーコンサンド(梶先輩によれば、文字通り目玉らしく、確かに美味い)を口に入れている間に、いつもの如く、弁当箱を抱えた木原が先輩と喋ってくれていた。

 「へー、部員が二年女子二人に一年男子三人かー。変なバランスだね」

 「でしょー。あと一緒の部室でやってる漫研に一年女子と三年男子ですけど、あっちはあっちで師匠と弟子だから、いたりいなかったりって感じっす」

 「知ってる、あの眼鏡コンビもよくそのへん走ってるの見たから。だからここの文系は足腰鍛えなきゃいけない伝統でもあんのかなーって思ってたんだよねー」

 「聞いたことねえっすよ!だいたいうちも漫研もそっち系の体力いらねえでしょうが!」

 「……結局、走らなかったら、入部希望、ってことでいいんすか」

 思ったよりはボリュームのあったサンドイッチを食い終わった俺は、次のコロッケパン(これも梶先輩から勧められた)を紙袋から出しながら、二人の会話にそう口を挟んだ。

 と、丁度ハムロールを手に取ったばかりの先輩は、うーん、と唸るような声を上げて、

 「いやー、まあ検討はしてたんだけど。ちょっと保留かなあ、今の話聞くと」

 「えー、なんでっすか?確かに七人いると部室せめー!って感じですけど、それ以外は雰囲気キリキリしてないし楽っすよ、割と」

 黄色っぽいドレッシングのかかったブロッコリーを箸でつまみながら木原が言うのに、無言で小さめのハムロールを三口めで食い切ると、四角いパックのコーヒーを飲んで。

 それで空になったらしい袋を綺麗に四つに畳みながら、先輩はようやく口を開いた。

 「確かに、部長の子もちっちゃい子もいい子そうだし、活動のガチ加減もゆるそうだし、いいかなーって思ってたんだけど。でなきゃこんな探り入れないし」

 どう言ったものか、と考えているように胸の前で腕を組むと、木原に向き直って、

「さっきさ、二年女子二人が凄い仲がいい、って言ってたじゃない?」

「あー、そっすね。特に、今あの人ら同じクラスだし」

 軽く応じた奴の言葉に、先輩は頷くと、難しい顔をして小首を傾げた。

「なんていうか、既にがっちり関係が出来上がってるとこに入っていくのって勇気いるよなーって。特に女子三人だとなんとなーくニ対一になりがちだし……やっぱ、二年から途中参加っていうのは今さら無謀だったかなー、とか思ったりしてさ」

 思いもよらない考え方を披露されて、俺は正直なところ面食らった。男、というよりは俺個人の考えだが、チカと知り合った時も、梶先輩を紹介された時も、新しい付き合いがまた広がったな、程度のことでしかなかったからで。

 それに、あの人なら特に、誰かをひとりでぽつんとさせるような真似は、出来そうにもしそうにもなくて。

 「……とりあえず、来てみればいいんじゃないすか。合わなかったら、やめとけばいいですし」

 そう言ってみると、今度はこっちに顔を向けてきた先輩を見返しながら、俺は続けた。

 「けど、たぶん誰が来ても、めちゃくちゃ喜ぶと思います、あの人」

 付け加えた言葉に、少し前の図書室での光景が、ふっと頭の中に浮かんで。

 そういや、あの時もそんな感じだったな、と、俺は初の部活動の日を思い返していた。



 名称が図書部、と言うからには、当然ながら読み、書くことがメインの活動になるわけだが、別に俺は現代文や古典が得意科目だというわけではなく、仕組みを読み解けば解が見えてくる、一種パズル的な要素も持ち合わせた数学などの方がまだ好きだから、あまり興味のない作品を前に、これを読み下せ、感想を持て、と求められること自体が苦手だ。

 だから、今後の活動内容についても、果たしてまともに出来るもんだろうか、と漠然とした不安があったわけだが、部長曰く、

 『とにかく、ジャンルは問いません。自分自身が好きだな、と感じるものとか、興味の沸いたものを選んでもらって、まず読み切るところから始めてください』

 最初に踏むべき段階を、そうして明確に示されたことで、俺も木原も少しは気を抜いて(チカはそもそも不安や緊張というものを知らない気がする)、言われるがままに立ち並ぶ丈高い書架へとてんでに向かって、しばらくして。

 「……あー、もー、興味が沸くっていうとキリねえしー!」

 特別棟の二階にある図書室の一角、窓際から、二番目の書架。

 未だ絞り切れずに、三段目の背表紙を漫然と追っていた俺は、小声で(さすがに大声はまずいと自重したらしい)叫びながら近付いてきた木原に顔を向けた。

 「何冊持って来たんだ?」

 「えーと……七冊ー。こないだ映画になった海外ファンタジーとか、アニメの原作とか、っても最有力候補は二冊なんだけどさ、スポーツ雑誌記者の自叙伝とー、パン職人探偵と居酒屋バイト助手とでかい犬の町内活劇譚だったらどっちがよさげ?」

 「……前の方かな」

 「いや、俺は後のを推すわー、犬好きだし。あと、生活サイクルが違い過ぎそうな人間二人がどうやって時間擦り合わせてんのかとか、犬種なんなのとか犬の行動描写ちゃんと出来てるかとかさ」

 「九割方犬がポイントかよ!もうチカお前犬関係の本にしとけば!?」

 相変わらずの小声でそう突っ込んだ木原に、いつの間にか俺の後ろに立っていたチカは薄く笑うと、既に選んでいたらしい大判の本を突き出してきた。

 「そうしてるよ。部長もなんでもいいって言うし、どうせだったらこの『世界の犬種・魅惑の大百科』を誰もが読まずにいられなくなるように仕向けてやろうと思って」

 ちなみに俺はワイマラナー推しー、と、わざわざページを開いて、俊敏そうなグレーの大型犬を示してきたのに、俺はざっと目を走らせた。

 百科というだけあって、それは要するに詳細なデータベースだった。品種としての歴史、特徴、性質、体調管理などに至るまで見開きで網羅されていて、すっと情報が頭に入ってくる。えらく筋肉質だな、とその引き締まった体つきを見ながら、ふと呟く。

 「……好きなもんとか、興味って、そんなにすぐ沸いてくるもんなんだな」

 何気なく零した言葉に、木原は目を見開き、チカは意外そうに眉を上げて、

 「なに、どっちも見当たらない?」

 「普段、本屋行くと実用的なもんばっか探してることが多いから、目的なしで探すのに慣れてない」

 「実用的ねえ。ジャンルどんなの?」

 「簡単な飯とか、キャラ弁とか、園グッズとかの作り方の本。あとチャリの直し方とか」

 「マジで!?弟にそこまでしてやってんの!?」

 「両親と三人でやってる。俺はそんなに大したことしてないけどな」

 父親は建築事務所に勤務する会社員、母親は看護師で、二人とも当然のように忙しい。特に家事の中心を担う母親は、弟が幼い間は夜勤が免除とはいえ、月に数度は研修や講習会が入ってくるし、体調の悪い時もある。俺がメインで動く必要があるのはそういう時で、先々弟が大きくなれば勤務形態も元に戻るし、家事が出来るにこしたことはないわけだ。

 そう言うと、木原は何故かぱっと目を輝かせて、

 「ってことは、結構メシ作れんの?なんだったら作れる?」

 「最近だと、ポテサラとか、ハンバーグとか。本見ながらしか出来ねえけど」

 「うっわすっげ……俺まともに作れんのカップ麺かレトルトかレンチン系だけだわー。チカは?」

 「俺が食いたいものだけ作れるよ。カレーとかカレーうどんとかカレー丼とか」

 「……チカ、弟と、好み一緒だな」

 何が食いたい、と聞くと必ずカレーがいい!と返してくる新の姿を思い出して言うと、木原は吹き出して、チカがちょっと嫌そうな顔になった時、小さなアラーム音が響いた。

 この中で唯一ブレザーを羽織っているチカが、胸ポケットから葡萄のようなパープルのスマホを取り出すと、長い指で画面に触れて、音を止めて。

 「はーい、三十分の制限時間終了ー。俺はいったんごま団子と部長のとこに戻るけど、お前らはどうする?」

 「俺はもう少し探してる。悪いけど、部長にはすぐ追いつくから、って言っといてくれ」

 「そっかー?なら、俺もチカと一緒に行くわ。これ見せて決選投票してくるし」

 適当に頑張れよー、と言い残して、二人が閲覧用の机が並ぶ方へと向かうのを見送って、俺はまた背表紙を見上げかけて止めてしまった。同じジャンルが同じ棚に配列されている以上、そうそう関心を引くものが現れるとは思えないからだ。

 別に、好きなものが全くないわけでもない。ただ、わざわざ読んでそれを考察するほど興味があるのか、と言われれば、どれもこれも浅い気がして。

 大原を見てるせいかな、とふと思いながら、次の列に足を向けかけると、背後から軽い足音が近付いてきて、傍で、止まって。

 「あの、浦上くん。慌てて決めなくてもいいよ」

 おずおずと掛けられた声に驚いて、俺はすぐさま振り返った。途端にまともに正面から顔を合わせる羽目になって、部長までびくりと目を見開く。

 直後、うろたえたように一歩下がると、右の腕を上げて、胸元できゅっと拳を握って、

 「その、何か悩んでるみたいって聞いたから、気になって……今日決めないとだめってわけじゃないから、ゆっくり探してもらって構わないよって、それだけ」

 「部長は、最初、何を選んだんですか」

 今にも身をひるがえしそうなのを、押しとどめるようにそう言いつつ、わずかに視線を落とす。この様子だと、また俺の目つきが悪くなっているらしいというのもあるが、何かそのままでは落ち着かない気がして。

 と、目の端に、部長が上げていた手を戻したのが見えたかと思うと、

 「……ええとね、こっちです」

 囁くように言うとともに、ローファーの爪先が視界から消える。顔を上げると、背中で揺れる二つの三つ編みが、さらに隣の書架へと消えるところで、俺は迷わずそれを追った。

 急ぐ足取りでもないからすぐに追いつきはしたものの、振り返ることもせず部長は足を進めていった。周りに他の誰もいないわけではないはずなのに、やけにしんとした中に、こつ、こつと、靴の踵が立てる音だけがはっきりと耳を叩いてくる。

 やがて、廊下側の端から二番目の列に入っていった部長は、その半ばで、ようやく足を止めて。

 六段ある棚のうち、上から三段目に目を走らせ始めると、つっと爪先立って、するりと一冊の文庫本を取り出してきた。

 「……『つぎにくるものは』?」

 「ね、なんとなく『ハテナ』がついちゃうでしょう、このタイトル」

 わざとなんだろう、背表紙だけを見せてきた部長は、俺の反応に小さく口元を緩めると、すぐに同じ位置に、それを戻してしまって。

 「私も、そんなに読書が習慣付いてたわけじゃないし、無難に読んだことのある作家の新刊でも探そうかな、くらいだったんだけど、目が引かれちゃって。『つぎ』ってなんなんだろう、来る、って何が、ひょっとしてホラーっぽい話なのかな、全部ひらがななのって何か意味あるのかな、とか色々考えてたら、気が付くと手に取ってたの」

 「それで、どんな内容だったんですか」

 明かされない謎に、誘われるように口にした疑問に、部長は一瞬、じっと俺を見てきて。

 「……秘密。知りたいなって思ったら、読んでみて」


 思いがけず向けられたのは、ふんわりと柔らかいような、笑顔で。

 嬉しげな、それでいて照れたようなそれに、覚えのある衝撃がまた、弾けて。


 「興味の持ち方って、色々あるとは思うんだけど、私の場合はこんな感じ。どうして、なんでだろう、って考えているうちに、はまりこんでいっちゃうみたい……これなんか、その典型だし」

 笑みはそのままに、もう一度棚を見上げた部長は、伸ばした指の先で、続刊らしい本を鍵盤でも弾くように、示していって。

 「その延長で、だんだん楽しいな、好きだなあ、って思うことが広がっていったから、出来たら、図書部に来てくれた皆にも、同じように思ってもらえるようになるといいな、そうなると嬉しいな、って……」

 そう言いながら、ふっと、我に返ったかのように言葉を切って。

 おそるおそる、俺の方に向き直ってくると、どういうわけか、ほんのりと頬を赤くしていて、胸に妙なざわつきが走って。

 「い、いきなり変なこと語っちゃってごめん!あの、でも、私も最初はそんな風だったから!」

 「……いえ、別に」

 「だから、えっと、ま、待ってるから!」

 変なことだとは、と続ける前に、一生懸命にそれだけを告げてきた部長はくるりと背を向けると、足早に書架の間を歩き去ってしまった。


 ……なんで、あんなに恥ずかしがってるんだろうか。


 どこか足取りの怪しい後ろ姿が消えたあとを見ながら、そんな疑問が、頭に浮かんで。

 思わせぶりな本のタイトルを、あっさりと上書きしてきたそれのせいか、その日、俺は結局何を選び出すことも出来ずに、部活一日目は終わってしまった。



 それで、後日、やっと俺が本を選んで持って行った時は、部長も副部長も、我がことのように喜んでくれて。

 全員で、好き勝手にバラバラなジャンルの本を読みながら、感じたことを書き留めたり、内容について突っ込み合ったりするのは、意外と居心地が良くて。

 そろそろ、苦手意識もだいぶ薄れてきたな、と思いながら、コロッケパンの残りを口に押し込んでいると、

 「ねえ、『あの人』って、三つ編みの子?」

 「……そうですけど」

 飛んできた問いに、パンを飲み下してからそう答えると、遠慮のない黒目の目立つ瞳が、じろじろと俺を見てきて。

 「ちっちゃい子の方は?」

 「……ああ。あの人もいい人なんで、歓迎されると思います」

 部長とタイプは違いますけど、と思ったままに応じると、先輩は小さく唇の端を上げて。

 ベンチからさっと立ち上がると、ブレザーとスカートを荒めに手ではたいてから、妙に感心したように見下ろしてきて。

 「なかなかよく見てんねー、推定王子(仮)ー?」

 「……だから、浦上ですけど」

 「ちょ、何その意味深な呼び方!?誰が!?誰のっすか!?」

 再び呼ばれた変な呼称に、瞬時に反応した木原が食いつくと、先輩は笑みを大きくして、

 「さーあーねー。そのへんは君から聞いてみれば?」

 俺の方を手で示してから、情報ありがとー、とさらっと言い捨てて、それきり振り返ることもなく、中庭から出て行ってしまった。

 と、三角パックの牛乳に口をつけていた俺の肩を、木原がぽん、と叩いてきて。

 「なーあー浦上ー?俺になんか言うことはないんかー?」

 「……そういや、今の人の名前、聞くの忘れたな」

 三角錐を傾けつつ、飲み干せるようにストローの向きを調整しながら、部長に言っとくべきかな、と考えていると、肩に置かれた手に、だんだんと力がこもってきて。



 ともかく、追及されるままにあの呼称の由来を話すと、なんだよーそれだけかよー、と奴に不満そうに言われたところで、昼休みが終わって。

 教室に戻るべく階段を上る途中で、あの時も真っ赤になってたな、と、靴を受け取った部長の姿がすっと蘇ってきたのに、俺は内心首を傾げていた。

 ……とりあえず、俺の興味の向く先のひとつは、定まってきた気はする。

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